三世紀の初頭、ペルシア人のマニによってメソポタミアで創始された宗教。 初期のものは、キリスト教、ゾロアスター教、グノーシス神秘思想の影響を 受けた。ササン朝時代に禁止されたが、中央アジアから中国にまで伝道された。 北アフリカのコプトにまで伝わり、アウグスチヌスの「告白録」によると、 彼は九年間もマニ教に迷わされたという。中央アジアでは、マニ教はさらに 仏教と接触し、方便のための折衷を行った。教義は善悪二元論からなるが、 ゾロアスター教のような善の最終的勝利はなく、永劫時にわたる善悪の相反 であった。マニ教も永劫時の思想をもったが、さらに無限光明の思想を持った。 これはゾロアスター教の影響によるもので、仏教の無量寿、無量光の思想と 何らかの点で関係があったと考えられる。マニの殉教はキリストの殉教に 比せられ、血なまぐさい殉教のドラマが演じられた。