PCカンファレンスの原稿(2次案)です。

7月末に愛知県半田市の日本福祉大学で行われます。
原稿締切は6月末です。
吉田先生に学内LANの図を作っていただいています。
1行47文字
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インターネット利用による力学系教育の例

   岩手大学工学部 宮本 裕 岩崎正二 出戸秀明 中澤 廣    岩手大学情報処理センター 吉田等明 miyamoto@iwate-u.ac.jp 1.まえがき  岩手大学では、学内LANをはじめインターネット整備を終えて、種々の教育研究 に利用されている。ここでは、著者らの工学部において、階段教室に設置された 大画面高輝度プロジェクター(1280*1024,1500ANSIルーメン)を利用して、建設環境 工学科の学生教育を教官のホームページを使って行った例を報告する。主として構造力学 や設計の講義・演習に活用した経験について、利点と欠点を整理した。 2.大画面プロジェクター利用システム  教材ホームページとしては、個人がPC画面を見るなら別の印象もあるのだろうが、 階段教室で大画面スクリーンを見せるのでは、学会のスライドやOHP提示と同じで ある。画面を表示する機器の特性が出てくる。  このプロジェクター画面を見せる方式は、やはり個別のPC画面で見せるよりも かなり効果があがるようである。個別の画面のデメリットとして、学生(生徒)の反応 が集団としてとらえにくいことが挙げられる。ある盛岡市内の高校の例では、個別画面 を真剣に見ていることはわかるのだが、画面を目で共有していないので、画面を見 ながらの議論に展開しづらいものがあるといわれる。(他に集中していない、つまり 内職している生徒を把握できないということもありえる) OHPを使うテクニックから連想されるように、1つの画面に沢山の情報を与えて も効果は期待できない。風景写真(構造物の写真)を見せるならそれもよい。文字は 大きく、言葉は少なくがモットーである。したがって、教師として心得なければなら ないことは、教師側は一度そのページを見ているので、わかっているものとして画面 をフラッシュのようにリンクを押す傾向があるようであるが、特に文字情報が多い場 合には、視聴者のことを考慮して、かなりゆっくりめに画面を展開しないと目が回る ことがある。  毎回の講義のまとめをOHP形式で示してみたが、この方式はなんとなくわかった ような気をおこすようだ。黒板、プロジェクター、言葉など違うメディアを使って、 音楽のバリエーションのように大事なテーマを繰り返して示すことは、それなりの 効果があるかもしれない。これは、人によって自分に向いたメディアが異なるという こともあるからであろう。例えば、文字を見ると印象に残りやすい人と、言葉を聞くと 覚えやすい人がいるように。さらに、大事なことを繰り返すのに同じメディアを使うと 慣れの現象が出てきて効果が薄れるということもあるだろう。したがって、大事なこと は種々のメディアで繰り返すことが効果的なのであろう。  また、半期の一連の講義が終わるとき、こうして作られた毎回の講義メモは自己 評価の資料になりそうである。これを修正を加えることで、次年度の講義資料はだん だん充実してくることが期待される。従来は教師が教材を書類などで残していたが、 「残す」という作業は本当に大変なものである。したがって、講義録作成時に多少手 がかかっても、きちんとホームページなどに残しておけば、コンピュータのファイル として半永久的に保存され、編集も容易である。また見たい時必要な時いつでもホーム ページで見ることができるので、教官側も講義や資料全体に十分な考察を加えること ができると思う。資料を置く場所とか見せる時間を取らない点は他のメディアにまね のできない良い点であろう。 3.いくつかの試み  思いつきで色々なアイデアを取り入れてみた。それを紹介する。  課題未提出者の学生番号を画面に表示すると違うメディアの刺激があるのか、わり あい提出状態がよくなった。学生用掲示板を見るよりも、全員の顔を見渡せる所で 直接未提出者を発表することで彼らにも臨場感があるのかもしれない。  教官が作ったホームページであるが、このホームページにおいても他の著書からの 引用にあたって、著者からの了解を受けていることを紹介するのも、学生の将来の 情報処理に対するマナーやエチケットの心得になるので、教育効果があると思う。その 反対の、電子メールのトラブルや電子マネーの落とし穴などを講義の合間に紹介する のも、これまた教育になりそうである。  宿題(作文)を電子メールで送ってくるものもいる。たいていはレポート用紙に書 いて提出するわけだが、それらの中から(名前は書かないで)おもしろかったものを 教官が入力してホームページに載せている。講義の感想などを電子メールで受け取り 、コメントなど付けてホームページに載せておけば、次年度の学生の参考にもなると 思う。  提出された課題結果についても、良い例、悪い例をホームページに残すことで、 次年度の教育に参考になることが考えられる。   学内回線状態が悪いと教室でホームページが見られないこともある。他にも、先月 まで見られた海外のページがある日突然サービスを止めて見られなくなったりする ことがある。そういうことを見せるのも、インターネットは万全ではないことを教える 一つの教材と考えられる。 4.教室におけるメディア考察(黒板からホームページまで)  黒板がいかなる認知的人工物なのか、これは大変興味深いテーマである。おそらく、 これまで教師達が教材研究だの授業研究だのといって、みがいてきた技能や授業技術 には多かれ少なかれ黒板とチョークの役割が含まれていたと思われる。有効に板書 を使っている教師は、板書計画を立てながら授業展開のシミュレーションをしている のではないかと思われる。それも、授業における教師の身体技法のいっさいが板書を 媒介にして展開しているという感じすらある。  たとえば、生徒の注意を一ヶ所に集中させるとか。一人の生徒に読ませながら他の 生徒の様子をうかがい、個別指導をするとか。あるいは、書くとか、消すとかいう時間 も生徒とのやりとりの呼吸やタイミングをつかむために使われている可能性もある。 つまり、単なる情報の提示装置ではない。  したがって、黒板を使わずに授業をするということは、自分が培ってきた授業技術 や身体技法すべてを再構築しなければならないという課題を背負うことになるのでは ないだろうか。だから、コンピュータを使った授業においても、とにかく教室全体 から見ることのできる提示装置がほしくなってしまうのだ。  ホームページ大画面表示方式も、古典的な黒板利用も、教師が何を学生に伝えるか、 その道具の一つにすぎない。大事なことは、何を伝えるかということであり、インター ネットの特性をみきわめ、教育のどの部分に役立つかを明らかにすることであろう。 5.利点と欠点  この方式の利点と欠点を列記する。 利点 ・新しい刺激を与えるメディアとして使える。 ・毎年の教材資料が効率的に整備され改善できる。 ・画像を見せるときなど、黒板、スライド、OHPなどを別に操作せず  ひとつのメディアですませることができる。 欠点 ・LANや機材設備に経費がかかる。 ・教室の管理運営に人手がかかる。 ・ネットワークの管理運営に人手がかかる。 6.あとがき  ほかにも、試験的にホームページを大学院の講義にも使っているが、課題に使う 手作り数値計算プログラムを毎年FDで手渡していたが、今年はさらに徹底するため ホームページにリストを公開することにした。大学院生の場合、彼らは研究室の自分 のPCで見られるから、もう少し小回りのきく使い方が期待できると思われる。こちら もぼつぼつ利用していきながら、応用例、活用例を考えて増やしていき、次の機会に 発表したいと考えている。岩手大学地域共同研究センターのマルチメディア研究会 から助言などいただいたことを感謝する。

OHP原稿その1(タイトル)