PCカンファレンスの原稿(1次案)です。

2004年8月4〜6日に神戸大学で行われます。
原稿締切は6月15日です。
1行47文字(以下45文字にする)
43行
2ページ
−−−−−−ここから−−−−−−

                        

建設環境工学通論を例としたインターネット活用教育

 岩手大学工学部建設環境工学科 宮本 裕 miyamoto@iwate-u.ac.jp 1.まえがき  JABEE対応のため要請されて、建設環境工学通論を他学科(応用化学科約80名と材料物性工 学科約50名)の学生に講義している。自学科なら予備知識や関連科目の講義があるのに対し、他学 科ゆえ専門用語に慣れていないことや予備知識不足のため、教え方に工夫が必要である。また、多人 数講義なので教育効果を上げるためにビデオ教材を利用したり、著者のホームページ(以下HPと記 載)を活用したり、質問や課題提出を電子メールで行っている。この建設環境工学通論のインターネ ット活用については昨年も発表した。ここでは、この2年間の講義体験の整理したものを述べる。 2.建設環境工学通論  通論としての建設環境工学を講義するための教材として、土木学会が監修した放送大学の教材「土 木工学」(全15巻)を使用した。厳密には建設環境工学と土木工学とは同じ学問ではないが、著者の 理解ではだいたい同じような学問である。そこでは世界の土木工学の歴史にふれながら、日本の明治 以降の土木工学の発展の歴史を述べ、土木工学の特性としての「社会資本の整備」「環境の保全」な どのテーマを具体的な事例を映像で示しながら、講義をする形態になっている。このビデオ教材に対 する学生の印象は、今まで知らなかった土木工学の意義や価値を知ったという声が多い。しかし、具 体的な力学計算や建設材料として重要な土やコンクリートの力学的性質に興味をもつ者もいるが、そ れらの基礎的な知識が不足のため、理解するのが困難な傾向にあった。放送大学のビデオは教材特有 の堅苦しさがあるので、建設工事の積極的なイメージを与えるため、プロジェクトXのビデオ(黒四 ダム、青函トンネル)も見せたところおおむね好評であった。これらのビデオは明らかにドラマ性を 意識して作られており、放送大学の堅苦しい教材との対比には著しいものがある。  講義では説明しきれないことや、欠席した者のために、講義の補足などをHPに載せてみた。積極 的にこのHPを見て、感想をメールで送ってくる学生は、期待するほど多くはなかった。 3.この講義のねらい  著者のこの講義に対するねらいは、建設環境工学を例にして自分でものを考える習慣をつけさせる ことにある。人の受け売りではない自分のものの考え方を育てること、それが社会に出て新しい技術 を身につけながら発展的に生きる技術者のあるべき姿ではなかろうか。  多人数教育のため、この講義はビデオを見せて、その感想を毎回規定の用紙に書いて提出させた。 ビデオの説明で不足のところなどは補足説明をした。また、関連のことを調べさせるため、宿題とし てインターネットを利用したり、図書館で参考書を読んで、電子メールで回答させた。学生の中には 自分で調べようとせず、すべてを教官から与えられることを期待する者もいて、失望を感じざるをえ なかった。そしてインターネットを利用して調べても、HPの単なるコピーに終わっていて、自分の 感想とか意見を加える者は少なかった。なお電子メールによる最終課題は、初年度では「自分の学科 の通論と建設環境工学通論の比較」とした。2年目は「化学史や物理学史や材料学史など」のどれか ひとつを選んで、自分なりに整理して提出させた。ここでもHPや参考書の丸写しが見られた。どこ がオリジナルか、自分で考えたのはどこかという質問をメールで行い、オリジナル性をきちんと答え られた者には良い成績をつけた。  著者が学生たちに望むことは、技術の可能性と限界をわきまえて、技術者の社会責任を自覚するこ とである。その考えるためのヒントを与える講義でありたいと考えている。

表1 紙と電子メールの回答提出比較 4.電子メールによる課題提出  電子メールで最終課題の回答提出をすることを義務づけたが、1年生の時に学習した電子メール 技術もその後使わないから忘れて使えない学生が少なからずいた。携帯電話で代用する学生の場合、 通信文の長さ制限ゆえ複数のメールを順次送って長文の課題提出をした。最終課題提出のため電子メ ールを受けつける期間を1ヶ月と設定したが、最初の半月はほとんどメールが送られてこず、最後の 1〜2週間に100名近くの学生からメールが送られてきて、著者も一時はパニックに陥ったほどで ある。また、他人のメールをコピーして送ってくる学生の防止のため、必ず本人に返事メールを送り、 新しい質問をするようにした。表1は従来の紙による提出とこの電子メールによる提出方式の長所と 短所をまとめたものである。1月末に集中的にメールが送られてくるため、2年目としては、事前に 優秀者を選び最終課題からはずした。すなわち、毎回の講義で簡単なテーマについて電子メールで回 答させて、そこから優秀な回答者を選び教室でみんなの前で内容を整理したものを発表させ、この成 績優秀者には最終レポート課題を免除した。今後この方式を進めることも考えている。 5.あとがき  講義の補助資料、課題の提出状況、模範解答、Q&A、講義に対する学生の意見や感想などをH Pに載せ、それらを有機的に活用し教育効果を上げてきた。映像としてのビデオ利用や電子メールに よる質問回答も試みた。マルチメディアもインターネットも、使おうとする意欲がないと効果は上が らない。また、ネット回線増強や学内利用端末室の端末数と利用可能時間の増加などハード的整備も 必要である。著者のHPは、コンピュータ利用教育の研究資料かつ時系列的な教育評価資料となる。 参考文献 1)宮本裕他(2001.12):教員の自己評価のためのホームページの利用、工学教育プログラム改革推進 研究発表会、一橋記念講堂(学術総合センター) 2)宮本裕他(2002.8):ホームページによる教育研究資料の保存と活用、PCカンファレンス、早稲田大学 3)宮本裕(2003.8):マルチメディアを使った建設環境工学通論、PCカンファレンス、鹿児島大学     この講義のためのホームページ

OHP原稿その1(タイトル)