PCカンファレンスの原稿(1次案)です。
2001年8月6〜8日に金沢大学で行われます。
原稿締切は6月末です。
1行47文字(以下45文字にする)
43行
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教員の教育業績の評価のためのホームページ
岩手大学工学部 宮本 裕 岩崎正二 出戸秀明
miyamoto@iwate-u.ac.jp
木更津高専環境都市工学科 佐藤恒明 長野高専環境都市工学科 永藤寿宮
1.まえがき
これまでPCカンファレンスにおいて、教室で手作りのホームページを見せて、学生教育に効果を
上げている例を報告した。また、力学系科目の講義・演習に活用した際の利点と欠点を整理した。
ホームページを教育研究に利用することは、学生にとって便利なばかりか、教官自身にとっても、
年々充実する電子教材資料を編集したり考察したり反省でき、教員の業績評価の資料として役立つ。
2.岩手大学における教育業績評価に関する講演会
岩手大学ではFaculty Development(以下FDと表記)の一環として、大学教官の研究業績評価や教育
業績の評価のための講演会を開催してきた。この講演会には、学長、学部長も参加する。平成13年
2月に行われた教育業績評価に関する講演会は次のような内容であった。
・講師阿部和厚教授のこの分野の仕事の背景 ・北大の点検評価の流れ
・ワークショップ型FDの設計・実施・効果 ・学生参加型授業
・教員の総合評価 教育業績(+管理運営、社会貢献) ・進行中の教育改善
大学は、学生教育という理念・目標がある。以下は北大における教育業績評価の項目である。
│A.教育指導に関わる実績 │
│ 1 教育経験年数 │
│ 2 最近5年間の担当科目 │
│ 3 教育指導の実績 科目、時間、単位数、受講学生数、講義資料など │
│ 卒業論文指導 単位数、直接面談指導時間、指導人数 │
│ 4 時間外学生指導 クラス担任、特別学習指導、工場見学、クラブ活動指導時間 │
│ 5 大学院教育 指導年数、修士課程科目、博士課程科目、担当大学院生数、論文審査数 │
│B.教育改善への積極的行動 │
│ 1 教科書、翻訳書、教育改善の論文、メディア教材 │
│ 2 教育に関するFDへの積極的参加 教育活動に関する講演、発表、研修会担当、受賞 │
│ 3 教育に関するFDへの受講参加 │
│ 4 社会人学習への対応 一般社会人対象(公開講座)、高校生など啓蒙、大学紹介資料 │
│ 5 専門性と関係した作品 文学作品、芸術作品、建築作品など │
│C.教育改善への積極的行動、努力の記録 │
3.著者らの教育業績の評価
上記の北大で行われている教育業績を参考にして、本学でも資料を作りつつある。この論文では紙
面の都合で、A.教育指導に関わる実績の中の、特に情報処理に関する教育(情報処理技術を教える
ための時間数やHP・電子メールを教育に活用した例)について報告する。さらに、B.教育改善へ
の積極的行動の中で、教科書執筆に関わるインターネット活用例についても報告する。
4.情報処理教育とその教官の負担時間
○佐藤の場合(木更津高専)
構造実験の中で、門形ラーメンやワーレントラスに荷重を作用させて、ひずみ(これから応力を計算
する)やたわみを測定している。一方で、ネットワークセンター演習室内の各PCからEWSへログイ
ンして、構造解析用のプログラムを動かす。もちろん、データ作成作業も必要であり、パスワードを
忘れる学生もいたり、その他に一人一人基礎的な操作面で、対応することが多い.
通算すれば、前期12時間/週 後期20時間/週となる。
○永藤の場合(長野高専)
CAD 2時間、 FORTRAN 10時間、 VISUAL BASIC 3時間、 PC操作指導 2時間
書類WORD&EXCEL 5時間、 MAILなど 2時間、 INTERNET関係検索など 2時間
年間を通じて合計26時間/週となる。
○宮本の場合
情報処理関係 HP作成、電子メールの相手 毎朝2時間(土日も)
年間を通じて合計14時間/週 この他、出戸がTAの協力の下に情報教育を週2時間行っている。
5.教科書のホームページ
以下に著者らが書いた数冊の教科書についてのホームページの活用の様子を説明する。
5.1「構造工学の基礎と応用」「構造工学」
これらの教科書を使って講義と演習を行ううちに、教室での質問、学生が理解しにくい箇所、説明
のポイントなどが明らかになってきた。また補足的な説明をつけたほうが良いこともわかった。そう
いうことをホームページに書き込んでおくと、学生にとっても便利であり、次期改訂版に反映される。
5.2「橋梁工学」
橋梁設計のための教科書である。橋の写真画像をホームページに載せたり、本四架橋の維持管理(公
団)や橋梁製作メーカ(会社)のホームページにリンクして、学生の自主的興味を引き出している。
5.3「情報リテラシー」
岩手大学では平成12年から全学的に情報処理が必修となった。そこで自前で教科書を作り、自学
科の1年生の後期から情報処理の基礎に使っている。なお、希望者の1年生には4月から、電子メー
ルやWWW操作を教えると、講義のホームページを端末室で見ることができ講義の理解が深まり、質
問や課題の回答に電子メールを使うことで効率を上げている。講義室においては全員に講義に関する
ホームページを見せている。こうして一部の意欲的な学生から積極的にインターネットを使わせ、彼
らが周りの友人に教えたり(教えることで自分の勉強にもなる)、あるいは先進的な学生の姿に啓発さ
れ他の学生もインターネットの世界に入っていくということが、自然な教育スタイルと思われる。こ
れは風呂のお湯が一部熱くなり対流しながら全体が熱くなっていく過程に喩えられるだろう。
この教科書の作成にあたっては、各著者の原稿が電子メールや郵便で宮本まで送られ、教科書原稿
の載ったホームページをみんなで見て意見交換して完成させた。市販されているこの本に、読者は前
書きに記載されたURLを見て質問や感想のメールを送れば、著者らに連絡できるのである。
6.あとがき
講義の補助資料、課題の提出状況、模範解答、Q&A、教科書に対する学生の意見や感想などをホ
ームページに載せてきて、それらを有機的に活用して教育効果を上げてきた。ホームページの教育に
おける利用は、学生のみならず、作成する側自身の反省と考察と編集の機会を与えるものである。
参考文献
1)宮本裕他(1999.8):インターネットを使った力学系教育の活用例、PCカンファレンス、信州大学
2)宮本裕他(1999.11):自己評価のための情報処理利用教育、文部省主催平成11年度情報処理教育研
究集会、東北大学
3)宮本裕他(2000.8):ホームページは便利な私の図書館、PCカンファレンス、北海道大学
教科書のホームページ http://structure.cande.iwate-u.ac.jp/textbook/textbook.htm
講義のためのホームページ http://structure.cande.iwate-u.ac.jp/education/lecture2000.htm