平成11年度自然災害東北地区部会講演の原稿です。
11月27日、28日に山形市で行われます。

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  SI を考慮した耐震設計について

           岩手大学工学部 宮本 裕 岩崎正二 出戸秀明          miyamoto@iwate-u.ac.jp 1.まえがき  1996年1月17日の兵庫県南部地震の被害により、道路橋示方書が同年12月に全 面改訂となった。すなわち従来の震度法の他に、プレート境界型の大規模な地震や、内陸 直下型の地震に対して地震時保有水平耐力法を適用することになった。さらに1999年 から、橋梁設計書はSI単位系で書かれることが決められた。このような改革の中で、著 者らの卒業生や現場の技術者たちのこの方面の理解を深めるために、具体的な計算例を示 すことにした。 2.設計水平震度  道路橋設計示方書では設計水平震度を次のように決めている。  震度法に用いる設計水平震度(地震時に構造物に水平に働く力の構造物自重に対する割 合)   kh=CZ・kh0  ここで CZ(地域別補正係数)については、日本地図より与えられる。   kh0 については地盤の種別に応じて標準値を決めている。   T種地盤 岩盤  U種地盤 T種地盤とV種地盤の中間の、洪積地盤と沖積地盤  V種地盤 軟弱地盤 震度法に用いる設計平震度の標準値kh0は次のように与えられる。 (表は省略) 地震時保有水平耐力法に用いるタイプTの設計水平震度   khc=CZ・khc0 地震時保有水平耐力法に用いるタイプTの設計平震度の標準値khc0は次のように与えら れる。       (表は省略) 地震時保有水平耐力法に用いるタイプUの設計水平震度 地震時保有水平耐力法に用いるタイプUの設計平震度の標準値khc0は次のように与えら れる。         (表は省略)  地震時保有水平耐力法では弾塑性 モデルなので、図−1のようなP−δ 曲線において、折線OCDとする。 これに対して構造物が弾性挙動をする とすれば図−1において、直線OCA となる。エネルギー一定則に従うと、 図−1(省略) △AOBと□COEDの面積等しいから、  μe=δE/δY=√2*μp-1 となる。 ここで塑性率μp =δP/δY である。  なお、SI単位と重力単位の換算は必要に応じた有効数字の桁数で換算するのを原則と する。  正確な換算の場合 1kgf=9.80665N  有効数字が4桁の場合 1kgf=9.807N  有効数字が3桁の場合 1kgf=9.81N  有効数字が2桁の場合 1kgf=9.8N  有効数字が1桁の場合 1kgf=10N 弾性係数などの物理定数は、計算しやすいように別に決められている。  鋼材ヤング係数 2.0*105N/mm2 (2.1*106kgf/cm2)  鋼材せん断弾性係数 7.7*104N/mm2 (8.1*105kgf/cm2)  コンクリートのヤング係数   設計基準強度 21N/mm2 (210kgf/cm2)のとき 2.35*104N/mm2 (2.35*105kgf/cm2)   設計基準強度 30N/mm2 (300kgf/cm2)のとき 2.8*104N/mm2 (2.8*105kgf/cm2)  コンクリートのせん断弾性係数   コンクリートのヤング係数/2.3 3.橋脚モデルの地震力の計算例 重量W=10kN(≒1020kgf)を頂部にもつ柱を考える。柱は鋼パイプで外径20cm、内径18cmとする。この柱が、地域区分AのI種地盤上にあるものとして、地震力Phを震度法で求めよ。 柱の高さはh=5mと8mのときについて考えよ。ただし、柱の塑性率μp=3.0とする。  パイプの断面積=π(202-182)/4=59.69cm2  パイプの断面2次モーメント=π(204-184)/64=2701cm4  頂部質量M=W/980=10/980=1.02*10−2kNs2/cm(1.04kgfs2/cm)  鋼材ヤング係数  2.0*105N/mm2 (2.1*106kgf/cm2)   h=5mのとき 固有周期T=2π√Mh3/3EI=2π√1.02*10−2*5003/(3*2.0*105*10−3*102*2701)       =2π√0.00786745=0.557s   kgfで表すならM=W/980=1020/980=1.04kgfs2/cm  固有周期T=2π√Mh3/3EI=2π√1.04*5003/(3*2.1*106*2701)        =2π√0.00763973=0.549s 震度法に用いる設計水平震度(レベル1)    0.1≦T≦1.1のとき  kh0 =0.2  また、地域区分AなのでCZ =1.0 である。     水平震度kh=1.0*0.2     地震力Ph=0.2*10=2.0kN 地震時保有水平耐力法に用いるタイプIの設計水平震度(レベル2)     T≦1.4のとき  khc0 =0.7     水平震度khc=1.0*0.7=0.7      khe=khc/√2*μp-1=0.7/√2*3.0-1=0.313     地震力Ph=0.313*10=3.13kN 地震時保有水平耐力法に用いるタイプIIの設計水平震度(レベル2)    0.3≦T≦0.7のとき  khc0 =2.0     水平震度khc=1.0*2.0=2.0         khe=khc/√2*μp-1=2.0/√2*3.0-1=0.894     地震力Ph=0.894*10=8.94kN h=8mのとき 固有周期T=2π√Mh3/3EI=2π√1.02*10−2*8003/(3*2.0*105*10−3*102*2701)       =2π√0.03222510=1.13s   kgfで表すならM=W/980=1020/980=1.04kgfs2/cm  固有周期T=2π√Mh3/3EI=2π√1.04*8003/(3*2.1*106*2701)        =2π√0.03129235=1.11s 震度法に用いる設計水平震度(レベル1)     1.1<T     kh0 =0.213T−2/3 =0.213*1.13−2/3=0.196     水平震度kh=1.0*0.196=0.196     地震力Ph=0.196*10=1.96kN 地震時保有水平耐力法に用いるタイプIの設計水平震度(レベル2)     T≦1.4のとき  khc0 =0.7     水平震度khc=1.0*0.7=0.7      khe=khc/√2*μp-1=0.7/√2*3.0-1=0.313     地震力Ph=0.313*10=3.13kN 地震時保有水平耐力法に用いるタイプIIの設計水平震度(レベル2)     0.7<T     khc0 =1.24T−4/3=1.24*1.13−4/3=1.05     水平震度khc=1.0*1.05=1.05      khe=1.05/√2*3.0-1=0.471     地震力Ph=0.471*10=4.71kN 謝辞 研究室4年生の波場志郎氏に図の作成の労をとっていただいたことを感謝する。 参考文献 1)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 SI単位移行に関する参考資料、1998 2)中井・北田:橋梁工学「上」、森北出版、1999 3)宮本・出戸他:橋梁工学、技報堂出版、1997 4)宮本・岩崎他:構造工学の基礎と応用(第二版)、技報堂出版、1996 5)宮本・岩崎他:構造工学(第二版)、技報堂出版、1999

OHP原稿その1(タイトル)