平成16年度自然災害東北地区部会講演の原稿です。
1月6日、7日に山形大学農学部で行われます。

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基礎地盤を考慮したランガートラス橋の地震応答解析

           岩手大学工学部 宮本 裕 岩崎正二 出戸秀明 遠藤昌宏          miyamoto@iwate-u.ac.jp 1.研究の背景と目的  平成7年1月17日に発生した都市直下型の内陸性地震である兵庫県南部地震は 大きな災害をもたらすと同時に、その後の耐震設計法に大きな影響を及ぼした。従来 の耐震設計は、設計地震力及び設計基準の詳細のみを規定した仕様設計が中心であり、 基準に従うことのみが要求されてきた。また、設計された構造物がどの程度の地震力 に耐え得る性能を有しているか、などについては検討されて来なかった。兵庫県南部 地震以降、地震荷重に対して構造物ごとの日標性能を設定し、これを満足するように 設計を進める性能設計法が注目されるようになった。  また、地震時における構造物全体系の動的挙動は、一般に上部構造物のみならず地盤 条件とも密接に関係している。このため、地盤と構造物の動的相互作用を考慮した耐震 設計が不可欠と考えられるようになってきた。このような構造物の動的挙動を把握する ためには、構造物全体系を地盤~基礎~上部構造物系の動的相互作用を含めた形でモデル 化を行い、地震応答解析を行うことで、その応答特性を明確にできると考えられる。  兵庫県南部地震以降、耐震設計法が見直されてきた。大きな見直し点の一つは、設計 時に考慮すべき地震波の入力加速度の増大や、海洋型と内陸型地震に対する地震波を 用いる点であろう。これらの地震波を考慮すれば、従来の基準で設計・施工された橋梁 は、橋梁全体の地震時応答値が大きくなり、変形や応力の増大が予想される。  また、地域のニーズや多くの要因により橋梁・橋台の設置箇所が地質的に堅固な岩盤 上とは限らず、軟弱地盤上に設置されるケースの検討も必要となってきた。  したがって、道路橋示方書改定に伴い、レベル2地震動を入力値として地震応答解析 を行い、土と構造物の動的相互作用を明らかにすることが本研究の目的である。         表1 2.地震応答解析  工学的基盤に地震波を入力させた場合の地盤や橋台、橋梁への地震波伝播特性や橋梁 本体と地盤・橋台との相互作用の程度について明らかにするために、地盤と構造物の 2次元動的相互作用解析プログラムSuperFLUSHr2Dを用いて解析する。ここでは、解析 対象モデルを、@図1に示したもの(G)とA図1に示したものからランガートラス檎を 取り除いたもの、つまり地盤のみのモデル(H)の2通り用意し、FEM部については、 @地盤の上半分(1〜10層)を粘性土,下半分(11〜20層)を砂質土とした湯合(E)と、 A地盤の全てを砂質土とした場合(F)の2通りを考え、入力地震動については、 「2002年制定コンクリート標準示方書[耐震性能照査編]」で例示された地震動のうち、 表1のような4種類を用意して基盤から入力することによって、16通りの入力データを 用意した。出力結果は、卓越周期と応答加速度水平成分の最大値の両方について それぞれ16通りずつ求めた。  解析条件については以下のようになる。  @図1の解析モデルにおけるランガートラス橋の横長,支間長,格間長,格間数はそれぞれ、6l.0m,60,0m,5.0m,12とする。  AFEM部の幅と地盤の高さはそれぞれ138m,40mとする。  B 自由地盤については、左右同一の地盤として計算する。  CFEM部の境界については、左側面,右側面ともエネルギー伝達漁界とし、底面は粘性境界とする。  D各入力動の方向は、水平方向のみとする。  E各入力地震動は、基盤に入力する。 3.結論  結論をまとめると以下のようになる。なお、I点とはランガートラス橋と橋台との 接点のことである。  地盤のみをモデル化して計算した結果の方が、地盤とランガートラス橋全体をモデル 化して計算した結果よりも、I点における最大水平加速度については大きくなった。  また、ランガートラス橋のみをモデル化して計算した結果も、地盤とランガートラス 橋全体をモデル化して計算した結果より、I点における最大水平加速度については 大きくなった。  よって、土と構造物の動的相互作用が働いて、地盤の振動が橋の振動によって抑え られていることと、逆に、橋の振動が地盤の振動によって抑えられていることもわかった。  ただし、内陸型@の地震動[最大加速度749ga|,卓越周期1.4s]で砂質土地盤モデル および砂質土・粘性土地盤モデルを解析した時は、地盤のみのモデルよりもランガー トラス・地盤モデルの方がI点における最大水平加速度が大きくなったので、その時 は、共振が起こっていたものと考えられる。  参考文献 遠藤昌宏:ランガートラス橋の時刻歴地震応答解析 (岩手大学大学院修士論文、平成16年3月)

OHP原稿その1(タイトル)