平成13年度自然災害東北地区部会講演の原稿です。
1月11日、12日に岩手大学農学部で行われます。
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耐震設計資料のホームページ
岩手大学工学部 宮本 裕 岩崎正二 出戸秀明 miyamoto@iwate-u.ac.jp 1.まえがき インターネットは教育研究におおいに利用されている。著者らはこれまでに、メーリン グリストによる会議や電子メールによるコミュニケーションの長所と短所について整理し て発表してきた。5) また、大学におけるホームページ作成のための諸問題を整理して発 表してきた。2),3) ここでは、耐震設計の研究の資料をまとめ教育研究に利用している事例について報告す る。 2.ホームページによる耐震設計の資料図書 具体的には以下のようなものをホームページで公開している。 (1)地震波データベース (2)道路橋示方書の改訂点 (3)時刻歴地震応答解析プログラムと入力データ (4)研究室の最近の研究(卒業研究、修士論文、博士論文) (5)その他の資料 これらの公開された資料を、適宜、教育や研究などに利用している。 ここでは、平成10年度の卒業研究「アーチ系橋梁の新旧示方書による設計比較」に使 われた時刻歴地震応答解析プログラムと入力データと計算結果の一部を紹介をする。 2.1 ランガートラス橋のデータ 著者らはすでに構造物の時刻歴地震応答解析法による電子計算機プログラムを開発し た。このプログラムは、入力データにもとづいて、まず静的なたわみや応力(曲げモーメ ント、せん断力、軸力)を計算し、その結果を用いて固有周期や固有ベクトルを計算し、 最後に部材ごとにたわみや応力の応答値を計算するものである。4) ここでは紙面の都合 で入力データと静的計算結果のみ紹介する。 新しい橋は新示方書にしたがって耐震性を高めて設計製作されているが、旧示方書によ って設計された橋が依然として供用されている。これらの旧示方書により設計された橋を 新示方書にしたがって設計すると、どのくらい断面の差があるかという研究テーマで、種 々の形式の橋 の比較を行っている。その際に橋の影響線の計算をするための入力データの作成が必要に なる。 そのための教科書を読んで入力データを作るときに、部材の形式とか座標値などのデータ を過去の例を参考にして作るのが効率的である。そこで、いくつかの代表的な計算例につ いてホームページに掲載してある。 ここでは、盛岡駅前にある開運橋(ランガートラス橋)をモデルとして、新旧示方書に よる設計荷重にもとづく部材力の比較をしてみる。以下に入力データを示す。 図1は開運橋(ランガートラス橋)の側面図、平面図、横断面図である。 これをもとに図2のようにトラスの各節点に節点番号をつけ各部材には部材番号をつけ る。それらから各節点の座標値や、各部材における部材番号と両端節点の関係や、部材形 式や、断面積や、断面2次モーメントなどの入力データを作るのである。 ここでは少し多くなるが具体的な入力データを紹介する。当然のことながら、データのひ と文字が間違っても正しい出力データが得られないから注意する必要がある。したがって このような具体的なデータが有益なのである。 (紙面の都合で省略。 アーチ系 橋梁の入力データのランガートラスの分を参照してください) 2.2 新旧示方書による部材軸力の比較 表1は昭和39年版道路橋示方書と平成8年度版のそれによる部材軸力の計算結果を表 している。これらを見ると、新示方書による軸力の方が、旧示方書による軸力よりおよそ 2割ほど増加している。これは主に設計荷重として自動車荷重が20トンから25トンに 増えたことによるものである。地震力の影響は、(著者らの開発した構造物の時刻歴地震 応答解析法4)により)この設計計算に使った静的影響線をもとに応答計算において地震外 力を入力として与え、さらに数値解析をする必要があるが、それは別の機会にゆずりたい。 新旧示方書による部材軸力の比較 3.ホームページ利用の利点と問題点 紙面の都合で簡単に述べるが、教育研究の資料をホームページに載せて利用することは、 時間を見つけてこまめに編集更新ができ、このようにしてできる電子化資料の蓄積は教育 思考活動の集積となり、その価値は信じられないくらいに大きい。また、ホームページを 作る教員の反省や自己実現のためにも有効である。 しかし、ホームページを更新したり、学生からの質問に対応するには、教員がそれにさ く膨大な時間が必要となり問題点は少なくない。資料のすべてがホームページ管理者のオ リジナルであればよいが、借用の資料であれば著作権という問題は考えなければならない ことである。 一方、最近のウィルス問題にみられるようにインターネットの(不正アクセスからの)セ キュリティを守ることは一時の休みも許されない。また、関係者によるインターネット設 備の増強や維持管理のための人的予算的対応の問題もある。 4.あとがき このホームページを使って、教育と研究に活用している。一部の資料は3年生の設計関 係の講義や演習に利用している。卒業研究にも時刻歴地震応答解析法のプログラムを利用 している。大学院の講義や演習にも使っている。模範的な入出力データをホームページに 掲示することで、毎年講義資料教材が充実し、卒業研究や修士論文にとっても有益な資料 となっている。 先頭(いわゆるホームページ)のアドレス http://structure.cande.iwate-u.ac.jp/index.htm 時刻歴地震応答解析法のアドレス http://structure.cande.iwate-u.ac.jp/textbook/dynarespons/dynares.htm 参考文献 1.宮本裕他(1998.12):インターネットを使った耐震設計資料図書、自然災害科学東北地区部会講演会、秋田大学 2.宮本裕他(1999.6):ホームページを利用した力学系教育について、1999年度日本建築学会東北支部研究報告会、東北大学 3.宮本裕他(2000.8):ホームページは便利な私の図書館、PCカンファレンス、北海道大学 4.宮本裕他(1985.10):時刻歴地震応答解析法、技報堂出版 5.宮本裕他(2000.3):情報リテラシー、技報堂出版