平成10年度自然災害東北地区部会講演の原稿です。
12月10日、11日に秋田市で行われます。
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インターネットを使った耐震設計資料図書
岩手大学工学部 宮本 裕 岩崎正二 出戸秀明 miyamoto@iwate-u.ac.jp 1.まえがき 全国的に、インターネットを使って、(電子メールによる)種々の研究連絡、(ホームページに よる)教育研究利用が行われている。著者らはこれまでに、電子メールのメーリングリストによ る会議や電子メールによるコミュニケーションの長所と短所について、これらを整理して発表し てきた。また、大学におけるホームページ作成のための諸問題を整理して発表してきた。 ここでは、耐震設計の資料をまとめて、教育研究に利用していることについて報告する。 このように教育研究のデータベースを構築した例について、利点と欠点を整理して述べる。 2.ホームページによる耐震設計の資料図書 具体的には以下のようなものを公開している。 (1)地震波データベース (2)道路橋示方書の改訂点 (3)研究室の最近の研究(博士課程) (4)その他の資料 (5)他とのリンク これらの公開された資料を、適宜、教育や研究などに利用している。
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岩手大学のホームページ | |||||||||
工学部のホームページ | |||||||||
建設環境工学科のホームページ | |||||||||
構造研究室のホームページ |
図−1 ネットワークにおけるホームページ Yutaka Miyamoto, Shoji Iwasaki, Hideaki Deto: Department of Civil and Environmental Engineering, Iwate University, Ueda 4-3-5, Morioka 020-8551, Japan 3.教育の利用 これらの資料の活用の中で、教育利用として講義室での公開がある。たとえば、著者らの工学 部において、階段教室に設置された大画面高輝度プロジェクターを利用して、建設環境工学科の 耐震設計教育を行っている。さらに、大学院の講義にもホームページ利用を行っている。 教材ホームページとしては、個人がPC画面を見るなら別の印象もあるのだろうが、階段教室 で大画面スクリーンを見せるのでは、学会のスライドやOHP提示と同じである。画面を表示す る機器の特性が出てくる。 OHPを使うテクニックから連想されるように、1つの画面に沢山の情報を与えても効果は期 待できない。風景写真(構造物の写真)を見せるならそれもよい。文字は大きく、言葉は少なく がモットーである。したがって、教師として心得なければならないことは、教師側は一度そのペ ージを見ているので、わかっているものとして画面をフラッシュのようにリンクを押す傾向があ るようであるが、特に文字情報が多い場合には、視聴者のことを考慮して、かなりゆっくりめに 画面を展開しないと目が回ることがある。 毎回の講義のまとめをOHP形式で示してみたが、この方式はなんとなくわかったような気を おこすようだ。黒板、プロジェクター、言葉など違うメディアを使って、音楽のバリエーション のように大事なテーマを繰り返して示すことは、それなりの効果があるかもしれない。これは、 人によって自分に向いたメディアが異なるということもあるからであろう。例えば、文字を見る と印象に残りやすい人と、言葉を聞くと覚えやすい人がいるように。さらに、大事なことを繰り 返すのに同じメディアを使うと慣れの現象が出てきて効果が薄れるということもあるだろう。し たがって、大事なことは種々のメディアで繰り返すことが効果的なのであろう。 また、半期の一連の講義が終わるとき、こうして作られた毎回の講義メモは自己評価の資料に なりそうである。これを修正を加えることで、次年度の講義資料はだんだん充実してくることが 期待される。従来は教師が教材を書類などで残していたが、「残す」という作業は本当に大変なも のである。したがって、講義録作成時に多少手がかかっても、きちんとホームページなどに残し ておけば、コンピュータのファイルとして半永久的に保存され、編集も容易である。また見たい 時必要な時いつでもホームページで見ることができるので、教官側も講義や資料全体に十分な考 察を加えることができると思う。資料を置く場所とか見せる時間を取らない点は他のメディアに まねのできない良い点であろう。 大学院の講義の場合は、少人数でもあり、各所属の研究室の端末から、ホームページに掲載さ れた資料を見ることができる。そのため、参考資料や課題の説明に使うことができるし、レポー ト提出状況や課題のヒントとしての追加資料を提示するなど、講義に活性化を与えることができ る。学生からの教材提供など、今後さらに開発的な利用が期待される。
表−1 耐震設計で考慮する地震動と目標とする橋の耐震性能
耐震設計で考慮する 地震動 | 目標とする橋の耐震性能 | 耐震設計法 | |||
重要度が標準 的な橋 (A種の橋) | 特に重要度 が高い橋 (B種の橋 | 静的解析法 | 動的解析法 (地震時の 挙動が複雑 な橋) | ||
橋の供用期間中に 発生する確率が高い 地震動 | 健全度を損なわない | 震度法 | 時刻歴地震 応答解析法 応答スペク トル法 | ||
橋の供用 期間中に 発生する 確率は低 いが大き な強度の 地震動 | タイプIの 地震動 (プレート 境界型の 大規模地震) | 致命的な 被害を防止 する | 限定された 損傷にとど める | 地震時保有 水平耐力法 | |
タイプIIの 地震動(内 陸直下型の 大規模地震) |
表−2 利点
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表−3 欠点
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6.あとがき
このホームページを使った、教育と研究の利用は開始して1年くらいである。学部の学生の多
人数講義に使ったり、少人数の大学院の講義やゼミにも使っている。学部の講義では、限られた
講義時間内に説明できなかった資料などを、ホームページに提示したり、模範解答を掲示するこ
とで、毎年講義資料教材が充実していくことが期待される。大学院の場合には、大学院生が研究
室のPCで見られるから、課題の計算プログラムや入出力データなどの資料掲示や、それに対応
して質問コメントを教官に電子メールで送るなど、個別的な小回りのきく使い方が期待できると
思われる。これからも、応用例を考えて増やしていき、次の機会に発表したいと考えている。
先頭(いわゆるホームページ)のアドレス http://structure.cande.iwate-u.ac.jp/index.htm
振動のページ http://structure.cande.iwate-u.ac.jp/miyamoto/vibration/vibrate.htm
参考文献
1.宮本裕他(1994.12):電子メールを使った大学内の情報処理活動について、文部省主催 平成
6年度情報処理教育研究集会講演論文集
2.宮本裕他(1995.6):大学の研究・会議連絡にネットワークを利用、PCカンファレンス、
東京都立大学
3.宮本裕他(1996.8):岩手大学におけるインターネット構築の歴史とインターネット利用支援
システムの現状、日本工学教育協会誌 Vol.44 No.3、37〜43頁
4.宮本裕他(1998.7):インターネット利用による力学系教育の例、PCカンファレンス、日本
福祉大学