科学談話会

岩手大学工学部教授
    宮本 裕 Yutaka MIYAMOTO

 科学談話会は昭和23年5月8日(1948年)に盛岡で結成された。戦後の日本の復
興のためには科学技術を高めることが必要である、との思いにかられて若い研究者たちが
自分たちの研究を発表しあう勉強会であった。岩手における当時の時代背景として昭和2
2年9月のキャサリン台風、昭和23年9月のアイオン台風などがあり、治水問題も科学
談話会設立の一つの大きなテーマであった。

 したがって人間でいえば、今年でちょうど満43歳を迎えるわけである。元北海道大学
工学部土木工学科の小川博三教授が、岩手大学助教授時代に育てた会であるともいえる。
この会の設立から今日にいたるまで、この会の発展につくした土木工学の関係者の努力は
大きいといえるだろう。

 昭和26年6月30日には県公会堂で、日本学術会議東北地区報告会が行われ、その夜
の県市合同の歓迎懇親会の席上、鈴木重雄岩手大学長により、この科学談話会が日本学術
会議に紹介された。

 会の運営は会を5つの班(岩手大学農学部、岩手大学工学部、岩手大学教育学部、岩手
医科大学、盛岡地方気象台)に分けて、それぞれの班が1年ずつ交代で運営(会費徴収、
講演会講師の依頼と司会など)を行っている。したがって5年に1度各班が運営の労をと
るわけである。現在の会員数はおよそ100名程度である。岩手大学工学部班における会
員数は25名であり、土木工学科の教官が伝統的に運営幹事を引き受けている。なお上記
ブロックに属さない個人会員も相当数いる。

 毎月1回の会場として、最初は主に岩手医科大学で開催していたが、昭和48年5月2
8日(1973年)から盛岡市立図書館で例会をもつようになった。これにともない盛岡
市からの援助も受け、盛岡市の広報にも次回の科学談話会の講師と演題などが掲載される
ようになった。現在例会は原則としてその月の第3金曜日の午後6時半から午後8時まで
である。講師の講演の後10分間程度、講演を聞いた聴衆から簡単な質問を受けている。
図書館には映写機、ビデオ、スライド、OHPなどの視聴覚設備が完備されている。

 以下に主な講演会を紹介する。
第35回 昭和26年4月24日 北大教授中谷博士を囲んで
第40回 昭和26年8月3日 東大教授山口博士(俳人)を囲んで
第78回 昭和29年11月12日 岩手県におけるヒロポン禍の実態 帷子六郎・小泉四郎
第106回 昭和32年4月19日 最近のコンクリートについて 山田順治
第112回 昭和33年1月16日 振動中の梁の特殊行動について 樋口盛一
第127回 昭和34年4月11日 田中館愛橘先生とローマ字 大塚明朗
第204回 昭和45年3月22日 21世紀研究会がみた盛岡  小川博三
第265回 昭和50年8月29日 エベレスト女性隊登頂成功談 三原洋子
第315回 昭和54年9月28日 計算機犯罪アラカルト 菅野文友
第320回 昭和55年2月15日 長寿村の食生活に学ぶ 鷹橋テル
第347回 昭和57年5月14日 東北新幹線について  宮原和雄
第359回 昭和58年5月20日 日本の電気(電力工学)の歴史 佐藤 淳
第369回 昭和59年3月21日 三陸鉄道の開業と今後の第三セクターの展望 高木清晴
第385回 昭和60年7月19日 ニュー・メディアと高度情報社会 太田原功
第406回 昭和62年4月17日 AIDSについて 田村昌士
第421回 昭和63年7月22日 降水短時間予報 気象台の新業務として 宮川和

 こうしてみるとその時々の話題がもりこまれて、時代の流れというものを感じないわけ
にはいかない。地域の一種の文化史ともいえるであろう。

 各界の第一人者の話を聞くことは、自分の研究をすすめたりまとめたりする上での知識
を得られ、かつ刺激を受けるものである。さらに現代の学問分野の広がった、いわゆる境
界領域的な研究あるいは学際的な研究の必要性の高まっているおりから、新しい研究のヒ
ントが得られるという利点もある。またこの会での交流を通じて研究者のネットワークが
いくつか生まれている。

 当時の会員たちがこの会で育てた研究成果をまとめ、それぞれの学者生活を確立してい
ったわけであるが、当初の研究会という性格は、現在は啓蒙の会というものに変遷してい
ったが、この会が現在も続けられていることに意義を感ずる。
(土木学会誌 1991年9月号)

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