これは
日本工学教育協会誌のインターネット特集号の原稿です。
岩手大学のインターネット構築の歴史を簡単にまとめて紹介しています。
いわば私の情報処理センター長6年間の卒業論文みたいなものです。
.......................................

岩手大学におけるインターネット構築の歴史とインターネット利用教育支援システムの現状
History and State of the Art of the Internet Education System at Iwate University

    宮本裕・三輪譲二・岩崎正二・出戸秀明
  Yutaka MIYAMOTO, Joji MIWA, Shoji IWASAKI and Hideaki DETO

 宮本 裕 岩手大学工学部建設環境工学科
  020 盛岡市上田4−3−5
  Civil and Environmental Engineering,
  Faculty of Engineering, Iwate University
  miyamoto@iwate-u.ac.jp

 三輪譲二 岩手大学工学部情報工学科
  Computer and Information Science,
  Faculty of Engineering, Iwate University
  miwa@imiwa.cis.iwate-u.ac.jp

 岩崎正二 岩手大学工学部建設環境工学科
  Civil and Environmental Engineering,
  Faculty of Engineering, Iwate University
  iwasaki@iwate-u.ac.jp

 出戸秀明 岩手大学工学部建設環境工学科
  Civil and Environmental Engineering,
  Faculty of Engineering, Iwate University
  deto@iwate-u.ac.jp

和文要旨
 インターネットを教育に利用することが毎日のようにマスコミにも取り上げられて
いる。これからの大学教育においてインターネットは欠かすことのできないものであ
る。インターネットを教育に活用するには、ネットワーク構築と利用環境作り、ハー
ド技術とソフトプログラム利用技術、さらには日常的ネットワーク障害対策、増加す
る未熟ユーザの指導教育、そしてインターネットの利用モラルの問題まであつかう必
要がある。これらの問題を整理して関係者に役立つ情報提供をしたい。

 この論文は下記のような構成から成り立っている。
 1.岩手大学のインターネット構築の歴史
 2.インターネット利用教育の例
 3.今後の展望と課題

  キーワード:インターネット、教育、電子メール、
ネットニュース、WWW

英文要旨
Education by use of the Internet has received a
lot of publicity in the media nearly every day.
It may be said that we cannot educate in the
university without the resources provided by the
Internet. Education via the Internet at Iwate
University is comprised of many themes: building
the network and making use of the environment,
hardware and software techniques,
handling day-to-day network problems (e.g. interruption
of e-mail),teaching beginner users, and ethics of Internet
use. In the hope of providing useful information
about our program, we will discuss these topics.
This report is composed of the following three
parts:
1. History of the Internet at Iwate University
2. Examples of education via the Internet
3. Future considerations and problems

Key words: Internet, Education, E-mail, Newsgroup, WWW

1.はじめに
 著者らはこれまでにネットワークを研究のみならず教育にも活用してきた。
また宮本は大学の情報処理センターの運営に長くかかわりあってきて、
ネットワーク構築の予算上や運用支援体制の問題処理にもあたってきた。
この機会にインターネット構築から始まって、予算のこと、管理運用体制のこと、
教育利用のハードとソフトの問題とその対策、さらにいかに教育効果を上げるか
という事などについて整理してみたいと思う。

 インターネットの教育における活用は、単に情報処理技術のみの問題ではなく、
機器の整備の予算とハード技術の他に、ソフトプログラムを使って教育効果を
いかにあげるかの利用技術の問題、さらには日常的ネットワーク障害対策、
増加する未熟ユーザの指導教育、そしてインターネットの利用モラルの問題に
まで及ばないと真の発展にはつながらないからである。

 この報告の特徴は以下のようになる。
(1)ネットワークがユーザの身の回りから外側へ広がってインターネットへと、
 自然発生的に発展していった歴史を、記録としてまとめた。
(2)大学が組織をあげてインターネット支援体制を作っていったことは
 一つのモデルと考えられる。
(3)コンピュータを利用した、いわゆるコンピュータ通信の特徴を
 利用心理学の観点から整理した。
(4)電子メールやネットニュースを教育に利用した例を紹介しながら、
 利用の可能性を検討した。
(5)インターネットを大学に作るためのハードウェア、 ソフトウェアの
 問題を整理し、管理運営するための条件を明示した。
 これは、これからインターネットを立ち上げる大学などには
 有益な参考資料となると思われる。
(6)インターネット利用のモラルの必要性を訴えた。

2.岩手大学におけるインターネット構築の歴史
 インターネットを教育に活用するのにあたって、インターネットの整備、
運用、管理の問題は避けて通れない。したがって岩手大学におけるネットワーク
構築の歴史の関係のある部分を中心にとりあげて説明する。この資料は
後でインターネット活用のための今後の展望と課題について説明するときに
関連するものである。

 岩手大学のネットワーク整備の経過をふりかえると、
LANの構築→LAN間接続(学内LANの構築)→インターネット接続→
学内基幹LANの構築(FDDI)→ATM となって、
まさにネットワークの歴史が岩手大学でも繰り返されている。
これは重要なことと考えられる。

 このネットワークは一方的に天下り的にできたものではなく、
ユーザの要望を適切に反映して作られたものである。
管理運営体制についても利用者の声を聞きながら、ボランティア教官の
専門的知識を活用できるように組織が作られていったので、
大学における施設としては強固なものであろう。
必要性という裏づけのもとに、民主的支援体制に支えられているので、
ネットワークの発展はこれからも期待される。

 学内LANと外部インターネットとが総合的に稼働するよう、
キャンパス情報ネットワーク作業部会が設置され、ネットワーク構築に
関する諸事項の検討及び諸作業を行ったのであるが、この作業部会の
果たした役割は極めて重要であった。

 すなわち、その業務内容は
(1)ネットワークの論理的設計(IP, AppleTalk,
 IPX ネットワークのアドレス体系を決め、ルール作りを行った)
(2)物理ネットワークの設定(ルータなどネットワーク機器の設定を決めた)
(3)ネットワークサービスの立ち上げ(named, mail, news, CS/modem)
(4)サーバマシンの設定、維持管理(サーバマシン msv の各種設定、
 host, user登録)
(5)望ましい IP接続の実現(TOPIC からの要請に沿った接続の実現、
 回線速度の増強)などであり、
ネットワーク導入業者と協力して新しい技術開発をして、
時には導入業者に技術指導をしたこともあった。

 ネットワークが稼働する状況が見えてきた時、学長を委員長とする
全学の情報システム委員会が組織され、ネットワークをはじめとする
情報システムの管理運営の理念を審議し、ネットワークの発展充実のための
予算や定員も扱う体制ができた。

 また、インターネット設備が充実されユーザの数も飛躍的に増加すると
ともに、日常の運用管理の問題が大きくなっていった。そして
キャンパス情報ネットワーク作業部会のあとを引き継ぐべく組織された、
情報処理センターの情報システム委員会が日常のネットワークの維持管理を
行っている。

この情報システム委員会の有志的メンバーはシステム障害の時に
研究時間を犠牲にしてまで対応してきたが、ユーザが増えネットワークの
利用が活発になると本業のかたわらのボランティア的仕事では
間に合わなくなり、情報処理センターに学内処置による専任教官(助教授)
が配置されたのである。

全学の意志を民主的にとりまとめるのに数年間を
要したが、各学部におけるインターネットを利用して研究資料を収集したり、
世界の研究者と電子メールによる共同研究を進める教官らの広い真面目な
要望が、円満にすべての学部の理解が得られるところとなり配置された
専任教官であった。

有志ボランティア教官と情報処理センター専任教官の
共同作業はこれからも続くと思われるが、インターネット発展のための
取り組みは文部省当局にも高く評価されるものと信ずる。

 なお各学部にもそれぞれのユーザの登録管理やコンサルティングの任に
あたる部局情報システム委員会をおき、ユーザの日常の世話をしている。

岩手大学インターネット構築の歴史
平成3(1991)年3月8日 第32回運営委員会で最終仕様書承認
       4月10日 持ち回り管理委員会で最終仕様書承認
      6月21日 入札書に対して技術審査
       6月下旬 日立製作所よりコンピュータ・システム導入計画
      10月28日 工学部世話人教官より工学部長へ工学部
      イーサーネット幹線路の設置費用の学部負担依頼
      翌年3月までに農・工・教・人社学部で部局LAN設置
      12月26日 岩手大学のIPアドレスとドメイン名を書面にて申請
平成4(1992)年2月5日 ドメイン名を取得
      3月までに農・工・教・人社学部で部局LAN設置
      6月2日 第8回国立大学情報処理センター協議会総会にて
      IPアドレス入手願い、1週間以内に実現
      11月27日 情報工学科主任教授から、IP接続の専門委員として
      情報工学科の教官を推薦された。
      12月22日 第1回TOPIC(東北学術研究インターネット)総会
平成5(1993)年5月10日の第51回運営委員会で平成5年度補正予算による
      学内基幹LANの仕様書策定準備委員会設置を決定
      6月2日 第1回基幹LAN仕様策定準備委員会
      8月12日 岩手大学ー東北大学間のIP接続確認(telnet,ftp使用可)
      9月1日 岩手大学学部LAN間のIP接続確認(NP100スタート)
      11月4日から平成6(1994)年6月21日まで、キャンパス情報
      ネットワーク作業部会を設置、納入業者(日立製作所)を
      交えて20回以上の会議を開催
      12月22日 第1回情報処理システム準備委員会を開催
平成6(1994)年3月31日 学内ネットワークニュース(iwate-u.center等)運用開始
      4月1日 学内LAN稼働 インターネット利用も実現
      4月11日 東北大学とのネットワークニュース配送開始
      8月5日 第1回岩手大学情報システム委員会を開催
     11月15日 情報処理センター情報システム委員会(第1回)
平成7(1995)年1月13日 東北大学までの専用回線が64Kbpsから512Kbpsに増強
       5月9日  工学部情報工学科にネットワークニュース配送開始
7月19日 岩手医科大学との間にIP接続の試験運用開始(64Kbps)
      7月22日 TOPIC盛岡NOC(岩手地区のネットワーク接続拠点)設置
       7月31日 東北大学までの専用回線を1.5Mbpsに増強
      10月19日 岩手県工業技術センターとの間にIP接続の試験
      運用開始(128Kbps) 
      11月1日 学内措置で情報処理センター専任教官を配置
平成8(1996)年1月5日 岩手県工業技術センターとの間を光ファイバー
      (192Kbps)に増強
      2月7日 宮古短大との間にダイアルアップIP接続の試験
      運用開始(128Kbps INS-C)
      3月31日 ATM運用開始

3.インターネット利用教育の例
 現在我々の回りで見られるインターネットの利用は3つに分かれる
 1.電子メール
 2.ネット・ニュース
 3.WWW

 学生教育に電子メールを利用する方法を後で述べるが、その説明を理解しやすくす
るため、教官が電子メールを利用して会議を効率的に行っていることを紹介する。我
々は情報処理センター関係の委員会をML(メーリングリスト)で会議連絡をしてい
る。つまり定例会議の補強として、メーリングリストにより、登録された一連のメン
バーに電子メールを送る方式で会議(以下に電子メール会議と呼ぶ)を行い意見交換
をしている。

 電子メール会議もコンピュータ通信の一種なので、コンピュータ通信の特徴をそな
えている。つまり書かれた記事を読んで、自分の意見をまとめる過程で、自分でもあ
いまいに理解していたことをより的確に理解して進歩していくものである。このように、
情報の再現性、個人の能力を越える広範囲の大量情報を必要におうじて見直せる
という特徴がある。当然コンピュータ通信は電話やFAXと違って、デイジタル記録
がとれ即ファイル化できることが利点である。

 ここで電子メール会議の長所は次のようである。
(1)定例の会議の制限時間を越えた、深い議論、多数の参加者による徹底的議論が
 行える。
(2)他人の書いた記事や意見を読んでいくうちに、自分自身の理解が深まり、疑問
 が解けてゆき、問題の本質が見えてくる。
(3)定例の会議の前に打ち合わせの電子メール会議を十分しておくと、本会議が短
 い時間で最大の成果が得られる。
(4)定例の会議の後にも、電子メール会議で理解不足の点を補ったり、後処理的問
 題処理活動ができる。
(5)自分の都合の良い時間に会議に参加できる。
(6)会議の日時の相談、議事録の確認など連絡事務が合理的に行える。過去の会議
 記録の参照や検索や引用なども容易にできる。

 しかし、電子メール会議は万能ではない、つまり次のような問題がある。
(1)会議メンバー全員が電子メールの送受信ができるよう、各自が端末や回線など
 の設備を用意する必要がある上に、通信ソフトの利用に慣れていないといけない。
 日本語を扱うため、文字化けの問題もある。
(2)相手の顔を見ながらの発言では出てこない、過激な発言もディスプレィを一人
 で見ているから、出てくることもある。相手の言葉じりをとらえる傾向も出てくる
 ので、注意する必要がある。
(3)対人コミュニケーションでなくコンピュータを使ったコミュニケーションに、
 とまどいを感じたり違和感をおぼえるメンバーもいる。
(4)会議の中でリーダ的立場のメンバーは自分の意見を書くことで、会議の方向を
 誘導することになるのを恐れて、故意に書こうとしない場合がある。
(5)書いたものが記録されるので、場合によっては相手に言質(げんち)を与える
 ことを恐れて、書こうとしない場合がある。
(6)世の中は理屈だけできまるものではなく、妥協の結果という場合がよくあるが、
 電子メールの会議になると、理屈やスジ論が先行すればなかなか現実的対処という
 ものになりにくい。

 したがって、電子メール会議を最もよく活用するためには、議論の整理をするため
に電子メール会議を使いながら、時として必要なメンバー同士で集まって話し合いで
意見の調整をすることも、全体の効果を上げるものと思われる。パソコン通信のオンv
ラインがこの電子メール会議にあたり、パソコン通信のオフラインが定例会議にあた
るといえるかもしれない。また議題も電子メール会議向きのものと、そうでないもの
があると思われる。

 インターネットのNG(ニュースグループ、ネットワークニュース)に相当するNG
を岩手大学内にだけ開放して、そこに情報処理センターの連絡記事を掲載したり、
ユーザの意見を反映させる試みを行っている。ネットワークの運用が進むにつれ必要
な連絡情報が速やかに流され、あるいは有用なソフト情報や使い方のノウハウなどの
情報交換が有機的に行われ、相当の効果を上げている。しかし、現状では利用するユ
ーザがまだまだ足りないためか、建設的意見を書き込むユーザは比較的少ない。いき
おい委員会委員主導のNGとなっていて今後のユーザの積極的参加が望まれる。

ここでは、電子メール会議やNGを、教育利用に使う可能性を紹介する。
(1)兵庫県南部地震(阪神大震災)の直後インターネットに地震と住民の連絡情報
 などの掲示板(ネットニュース)が作られ、避難所、ボランティア活動、変わりゆく
 交通機関情報などさまざまの記事が書かれた。最初は知り合いの生死安否情報、
 食料品の入手情報が多かったが救援物資が届くにつれ避難所でのプライバシー問題
 とか心の悩みの記事が多くなっていった。この中から耐震工学の講義に関係のある
 記事を紹介して、講義の話題を広げ興味を深めた。
(2)オウム真理教事件について、信仰のこと、マインドコントロール、警察のささ
 いな違反を理由に関係者を逮捕する件などのインターネット記事を講義の合間に紹介
 して、学生の社会人としての自覚や人生の生き方について意見交換をした。
 これからの工学教育は単なる技術教育をするにとどまらず、社会での技術者の役割
 を考えさせる教育も必要なので、この種のインターネット利用法も積極的に考えた
 ほうがよいと思われる。
(3)情報処理教育などで、学生からPCの操作法や言語処理等でのトラブルや質問
 があったとき、インターネットのニュース記事にQ&Aを列記しておくと、同様の症
 状を体験する他の学生の参考になる。
(4)複数発表者によるゼミ形式の講義にネットニュースを用いて、発表者グループ
 と質問者グループとの討論を記事書き込み方式で行う。発表者を1人としてもよいが、
 議論が続くためには、質問に受け答える発表者が複数のがよいかもしれない。ただし、
 議論が発散しないように指導教官がコントロールする必要がある。
(5)ディベート教育の場に活用する。すなわち、ある状況を与えて、対立する2つ
 の立場に学生を分けて、それぞれの立場に立った討論をネットニュース記事に書き込
 みながら行う。
(6)講義の評価に使う。通常はアンケートにより講義の評価を行っているが、誰か
 学生の感想を読んだほかの学生が、それにコメントを与えたり、内容を深めたりする
 ことができる。自分一人の発言では深まらない意見も複数の学生が追加補正すれば
 内容は深められる。

 WWWは画像、文字、音声の情報を受け取れるマルチメディアのコミョニケーショ
ンである。WWWを教育に使って海外の情報を活用すれば、学生には興味のある体験
となる。しかし、画像データは大量データのため転送速度の問題があり、多数のユー
ザが同時に利用するとレスポンスが遅くなる。このため回線速度の増強が望まれる。
WWWの場合は使う端末とそのソフトによって制限があり、まだ発展途上のメディア
である。したがって今後も教育と研究のテーマはたくさん期待される。

4.今後の展望と課題
 インターネットは自分の大学の中のLANだけでなく外部のネットワークと結ぶ広
大なネットワークである。したがって学内LANの管理運用の他に、対外接続の問題
がある。ユーザ数の増大とその多方面の利用のために、管理運営の体制は重要である。
岩手大学では学長を委員長とする全学の情報システム委員会がネットワーク利用の予
算や定員処置および理念を審議する。そして情報処理センターの情報システム委員会
が情報処理センターの専任教官と協力しながら全学のネットワークのメールサーバ、
ニュースサーバの基本的管理運営の業務をおこなっている。さらに各学部の情報シス
テム委員会がそれぞれの部局のユーザの指導や相談相手になって、教職員、学生のネ
ットワーク利用を活発なものとしている。

 現在のところ全部の学生がネットワークを使うためのパソコンなどの端末は十分で
はない。研究室によっては修士論文や卒業研究をまとめるためパソコンで実験や解析
のデータ処理を行ったり論文をワープロソフトで書いたりしている。その際、研究デ
ータを他の大学からファイル転送で入手したり、ネットワーク利用上の質問やトラブ
ルについてネットニュース記事に書いて情報交換している学生も少なからず存在す
る。しかし、ほとんどの学部の教官がそれぞれの講義の中でインターネットを利用す
るところまではいっていない。その直接的理由は、全学の4学部でそれぞれ学生が使え
る教育端末が十分に設置されていないからである。今年度中に情報処理センターの
レンタル予算で新しいシステムを導入することになっている。その際には全学部にお
いて、それぞれ教育端末室に教育端末パソコンをおくので、飛躍的な教育利用が期待
される。

このように、ネットワークを利用した教育を行うためには、指導教官、ネット
ワーク管理運営体制はもちろんパソコンやLAN機器などの設備を充実させる予算
の裏付けが必要である。そしてコンピュータ技術の進歩は激しいので、せっかく買っ
た最新の機器も数年で時代遅れとなるので、時代にあったコンピュータ教育を行うに
は、レンタル予算で機器の整備を行うのが望ましい。

 インターネットはパソコン通信にくらべて管理者が見えない民主的コミュニケーシ
ョン手段であると言われるが、裏をかえせば自由ゆえのモラルの問題があると思う。

すなわち、法律の不備をよいことに何でもありの向きも見られる。
その一つの例として、アメリカでの連邦ビル爆破事件で使われた爆弾の作り方がイ
ンターネット記事に掲載されていたことを紹介する。連邦ビル爆破テロで逮捕された
ティモシー・マクベイ容疑者がインターネットを利用していたかどうかは明らかにな
っていないが、少なくともインターネット記事には同事件に使用されていたのと同型
の爆弾の作り方が情報として流されていたからだ。

米上院の司法委員会の爆弾テロに関する公聴会では、情報ハイウェイには大きな利点
があるが、暗い側面も持っているとの議員たちの発言がある。「テロリスト・ハンド
ブック」には、単に読んで楽しむためのもので、実際に使うためのものではない、との
ただし書きはあるが、その後に延々と爆弾の作り方の説明が続いている。13歳の少年
に爆弾の作り方を教えるようなマニュアルを規制することはできないのか。なん
とか法律対策をしなければならないと、米国の議会でも議論されている。

インターネットはあくまで情報伝達手段であり、どう使われるかは使い手と使い方
次第。つまり諸刃の剣である。(インターネットに功罪あり、産経新聞、
平成7年5月13日)

 したがって、インターネットに対応する法律の整備が望まれるが、学内においても
運用モラルや機密保持の原則のルール作りを進めるべきである。

5.あとがき
 パソコン通信やインターネットなどのコンピュータ通信は”時と空間を越えるコミ
ュニケーションシステム”と言われている。離れた学部どうしあるいは全国の大学ど
うしを結ぶ手段だけでなく、自分の都合のよい時間に利用できるコミュニケーション
システムでもある。

 インターネットは双方向性と対等性をそなえた革命的メディアと言われる。双方向
性と対等性は電話やFAXの特徴でもあるが、大量データをコンピュータと連動して
扱えるため、多種多様な使い方が期待されるわけである。そのため複雑な使い方のノ
ウハウが要求される。

 著者らは、学内LANの構築と、岩手大学のインターネット化の仕事を通じて、コ
ンピュータ通信等を体験的に学んできた。岩手大学では情報処理センターの他に工学
部をはじめ農学部、教育学部、人文社会科学部にも教育端末室を設けて学生が日頃か
らパソコン端末に親しめる環境が今年度中にできるので、それらの教育端末を活用し、
これからも学生の教育利用の発展につくすつもりである。

 この原稿は共著者の間で電子メールを使って原稿の推敲をした。英文要旨について
は、著者の原案を岩手大学英語教師のアンハー先生に電子メールで送り、著者とアン
ハー先生とで何度か電子メールで討論した結果をまとめたものである。ここにアンハ
ー先生に感謝する。

参考文献
1)宮本ほか:岩手大学における電子メールとBBSの現状と将来、文部省主催平成
4年度情報処理教育研究集会講演論文集(1992.12)
2)宮本ほか:電子メールを使った大学内の情報処理活動について、文部省主催平成
6年度情報処理教育研究集会講演論文集(1994.12)

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