海妻学長先生に頼まれて「学長だより」に
今年(1997年)8月の宮古での学生協議会メンバーの
研修討論会の報告を載せました。
これはその原稿です。
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課外活動施設と学寮は学生協議会研究会のテーマ
                    学生協議会委員長 宮本裕

 8月26日と27日に宮古へ行って、学生協議会研究会(正式には厚生補導
担当教官研究会)に参加してきました。

私は今年はからずも工学部学生委員長と学生協議会委員長になりました。

宮古では学生協議会の懸案事項である「課外活動施設問題」と「学寮問題」
について、フリートーキング形式で委員の認識を深めるため勉強会をしてきたのです。

 このたび、学長の海妻先生から、これらの話題を簡単に報告するよう依頼されました。
もっとも以下述べることは、このたびの学生協議会研究会で出た話題そのものではなく、
それから生まれた私の感想みたいなものです。

 ここで先ず、岩手大学の教職員学生さらに卒業生などが参加するメーリングリスト
のことを紹介します。そこでは大学の日常のもろもろの話題が電子メールで語られて
います。

 実はこのメーリングリストに宮古で行われた学生協議会研究会で出た話題を披露
したところ、学生協議会委員ではない先生方や卒業生から色々コメントを頂き、
いわば場所を越え(学部を越え、かつ盛岡から遠く離れた卒業生も参加)、時間を
越え(数日間におよぶ議論)、世代を越えた意見交換ができました。

 学長もこのメーリングリストに参加していて、面白いから紹介してはどうかと私に
勧められたわけです。岩手大学の学長は全国の国立大学の学長の中で電子メールを
使える数少ない学長なので、貴重な存在と思います。

 そういうわけで学生協議会研究会での話題を中心に、他の教官や卒業生も加えた
フリーな会話から、私が思いつくままに文章にまとめてみました。

予算とか規則について審議するのが委員会ですが、関係事項について広く学内
あるいは学外の声を聞きながら委員会活動をすることも悪くないと思うからです。

 さて、課外活動施設のことを話し合うため、宮古に出発する前にサークル部室の
現状を見て回りました。汚れた狭い荷物置き場で青春のひとときを過ごす部員の姿を
見たり、老朽化して危険な部室や練習場に道具をきちんと整理してあるのを見たり、
馬の世話をしている女子部員の姿を見てきました。論より証拠というわけで、
この見学は委員の認識を深めました。

 研究会では、実績調査の上あまり活動をしていない部は廃止すべきで、予算不足
がちのアクティブな部を更に支援してやるべきだという過激な意見なども出ました。

現在の課外活動施設にはいろいろな問題がありますが、基本的には施設が不足して
いることです。

 しかし、施設の建設は、学生総定員によって定まる基準面積に縛られる上に、
本学ではその残余面積がないのです。工学部にある施設には自動車クラブ、野球場、
アーチェリー、テニスコートなどがありますが、これらはいずれも様々な問題で悩ん
でいます。他の学部にあるのも同様でしょう。

 課外活動と勉学とのあるべき関係は、先生によっても意見が異なり、なかなか
統一見解をまとめるのは大変です。

 学寮に話題を移しましょう。学寮は楽しいでしょうか?

 私は建設環境工学科1年生の講義をもっているので、何でもいいからと岩手大学の
感想を書かせると、食堂が狭い、女子トイレが少ないという他に、寮で上級生から
可愛がられて(いじめられて)困るというのがあります。

 1年生の寮生からの毎年のような感想です。そこで、3年生や4年生の寮生に
伝えると、自分たちも1年生の時はそういう思いをしたが、長く住んでいると
いつのまにか加害者に変わってしまうのだといいます。今度は気をつけますと上級生
は答えるのです。

中には4年生が勉強したいのに,1年生が部屋に友達を連れてきて,追い出すわけに
もいかず,勉強ができないと嘆いているケースがあります。

結局集団生活のための自己規制ができないのだと思います。

 私も寮にはよほどのことがないと行きませんが、たとえば緊急に就職の事務連絡を
しなければならない時などは寮に走ります。同袍寮には、必ず誰か私の建設環境工学
科の学生がいるので、その学生に頼んで会いたい学生の部屋まで案内してもらいます。

ああいう汚れた環境でも住み慣れたら気分は天国なんでしょうか。自分の城だから。
まあ、どこの大学でも男子寮はひどく汚れています。

 学寮の最大の問題は入寮率の低下です。年間を通して見ると4寮とも入寮定員を充
たしていません。

 同袍寮の入寮率は80%を越えています。紅梅寮では年度当初は100%だそうで、
入寮希望者を断っている状態です。女子学生の場合は、初めて親元を離れる娘を心配
して親が入寮させたがるのでありましょう。このごろはどの学部でも女子学生が多く
なったから、紅梅寮に入る希望者が増加するのは理解できます。
問題は北歐寮で入寮率は50%に満たないことです。

 なぜ?少し大学から遠いから?新しい寮を建てるにも、現在の寮が希望者が多く
いつも満員という状態でないと、予算要求できないそうです。男子寮と女子寮を入れ
替えてほしいと紅梅寮の学生は言っているそうです。

 また、紅梅寮は道路に近いせいか,一階の部屋は外を通る人から見られるようで、
とても不安に思っている学生もいるとのこと。それから、寮の前の道はなんだか交通
事故が多いようです。去年の秋にも寮のすぐ横の歩道に車が突っ込んで街路樹にぶつ
かって運転してた人が死んだとか。接触事故も毎週のように起こっているようです。

 何年も留年しても学部生は寮に居られるのに、真面目に勉強して大学院に進学する
と大学院生の入る寮がないのはおかしいという先生もいます。実験などで遅くなる
学生が多くなるのに。バイトして生活費を稼ぐこともできなくなるのに。

 卒業生によると、自啓寮と紅梅寮には入寮制限があるが、同袍寮、北歐寮は卒業
するまで、最大8年は寮にいられるそうです。空き部屋があるなら大学院生でも入寮
を認めて良いのではという話はあるようです。

しかし、学部生と大学院生とではカリキュラムのパターンが異なり、寮の自治会活動
に殆ど参加できない、等の理由でこの話は困難なようです。

なお一部の寮は寮生合意のもとに大学院生を入寮させているようです。

 岩大四寮は基本的に自治寮ですので、寮の運営、寮則改正等はすべて寮生の手に委
ねられています。学部ごとの寮のように見えますが、これは本学の歴史があるからで
しょう。

農学部は高等農林時代からの寮があり、植物園の中に自啓寮があったのです。工学部
も、戦前に室蘭工大と同時期に高専として誕生しました。そのとき景気のよかった
松尾鉱山が学生寮を寄付しました。それがずっと存在し、その寮を壊して新寮を今の
土手下に移転してから、私のいる建物(6号館)ができたのです。だから、工学部東
門のところに大きな柳の木と同袍寮の記念碑が残っています。北歐寮も紅梅寮も師範
学校時代からの伝統です。

 OB、OGの話によると、寮による入寮率のバラバラを是正するため、寮則を改正
して、他の学部の学生でも受け入れることができるようにしたようです。本来の学部
の学生を優先にしても空きがあれば、他の学部の学生を入れるようにしておけば、
はるかに合理的です。寮生に説明して合理的に運営するように、寮則を整えたほうが
いいですね。

 国際交流会館には1年間しか居られないから、留学生の寮も求められています。
増大する私費留学生のことを考えると必要だと思います。

 卒業生もいうように、岩大四寮は学校当局との関係が比較的良好に行っている寮
だと思います。これは学生対応の教官事務官及び寮生みんなで作り上げてきた歴史で
しょう。

 学生協議会ではこれらの意見を参考にしながら、「課外活動施設問題」と「学寮問
題」の将来計画を考えて行きたいと思います。

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