文部省主催平成11年度情報処理教育研究集会(1次案)です。

11月12〜13日に東北大学川内キャンパスで行われます。
原稿締切は10月末です。
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自己評価のための情報処理利用教育

   岩手大学工学部 宮本 裕 出戸秀明 岩崎正二 吉田等明 miyamoto@iwate-u.ac.jp 1.まえがき  著者の研究室のPCにホームページを作り、それを使って、種々の教育・研究・連絡な どに成果を上げている。方式としては多人数クラスを対象に、階段教室に設置された大画 面高輝度プロジェクター(1280*1024,1500ANSIルーメン)を利用して、講義や演習にホー ムページを見せている。もう1つの方式としては、研究室ゼミや大学院の講義の際に、ホ ームページを使って、課題の資料や先輩の回答例を紹介したり、レポート提出状況を載せ て、学生が個別にPC端末から見る方式である。これらの方式の利点と欠点を整理して、 毎年このようにして作成していく教育資料が教官の自己評価の資料となることを報告す る。 2.大画面プロジェクター利用システム  階段教室で大画面スクリーンを見せることにより、学会のスライド発表やOHP提示と 同じように、多人数に見せる方式で、学生(生徒)集団にまとまってメッセージを伝える ことができた。 OHPを使うテクニックから連想されるように、1つの画面に沢山の情報を与えて も効果は期待できない。できるだけ大きな文字で、単純明快な内容を提示するように心が けないといけない。  毎回の講義のまとめをスクリーンに提示してみたが、理解の確認という点で、効果があ ったようだ。黒板、プロジェクター、言葉など違うメディアを使って、音楽のバリエーシ ョンのように大事なテーマを繰り返して示すことは、それなりの効果があるかもしれない。 構造力学1(1年生前期) 第1回目  1点に集まる力の合力 第2回目  1点に集まらない力の合力  力の多角形と連力図 第3回目  重心(図心)  断面1次モーメント  断面2次モーメント 第4回目  平行移動の公式  断面1次モーメントの平行移動  断面2次モーメントの平行移動  組立断面の断面2次モーメント 第5回目  断面2次モーメントのまとめ 第6回目  静定梁 静定桁  反力 曲げモーメント せん断力 第7回目  片持ち梁  反力 曲げモーメント せん断力 第8回目  静定梁の曲げモーメントとせん断力のまとめ 第9回目  曲げモーメント、せん断力、荷重強度の関係  最大曲げモーメント 第10回目  ひずみ 応力  梁の曲げ応力 第11回目  梁のたわみ曲線の微分方程式 第12回目  モールの定理 第13回目  補足 施設設計学(3年生前期) 第1回目  全体的な話  橋梁の定義 [固有周期] 第2回目  橋の構成 横構と対傾構 [減衰のない振動] 第3回目  ゲルバー橋の特徴 [減衰のある振動 減衰定数] 第4回目  アーチ橋の特徴 [強制振動] 第5回目  タイドアーチ橋、ランガー橋、ローゼ橋の特徴 [強制振動の特解] 第6回目  ラーメンの特徴 [強制振動の特解] 第7回目  吊橋の特徴 [強制振動の一般解] 第8回目  斜張橋の特徴 部材名称テスト 第9回目  活荷重 死荷重 衝撃荷重 第10回目  地震荷重  振動理論[地盤と加速度] 第11回目  新旧示方書の比較  振動理論[絶対加速度] 第12回目  橋の影響線  振動理論[構造物の地震応答解析] 第13回目 まとめ  半期の一連の講義が終わるとき、こうして作られた毎回の講義メモは自己評価の資料に なりうるものである。これを修正を加えることで、次年度の講義資料はだんだん充実して くることが期待される。  必要な資料も、ホームページの自分用ブックマークから探し出すこともできるように なった。  このように、見たいときにすぐ探し出せるので、講義や資料全体に十分な考察を加える ことができると思う。資料を置く場所とか見せる時間を取らない点は他のメディアにまね のできない良い点であろう。 3.大教室での利用に関するいくつかの試み  思いついたことや学生から提案された色々なアイデアを取り入れてみたので、それを紹 介する。  課題未提出者の学生番号を画面に表示すると、新メディアとしての刺激があるのか、 わりあい提出状態がよくなった。学生用掲示板を見るよりも、全員の顔を見渡せる所で 直接未提出者を発表することで彼らにも臨場感があるのかもしれない。  優秀な提出答案をホームページに掲載しておくと、学生の励みとなり、次回には さらに優良な回答が出そろう傾向がある。また、昨年度の回答例を参考にすることで、 より良い回答を学生が作ることもできる。  教官が作ったホームページであるが、このホームページにおいても他の著書からの 引用にあたって、著者からの了解を受けていることを紹介するのも、学生の将来の 情報処理に対するマナーやエチケットの心得になるので、教育効果があると思う。その 反対の、電子メールのトラブルや電子マネーの落とし穴などを講義の合間に紹介する のも、これまた教育になりそうである。  宿題(作文)を電子メールで送ってくるものもいる。たいていはレポート用紙に書 いて提出するわけだが、それらの中から(名前は書かないで)おもしろかったものを 教官が入力してホームページに載せている。講義の感想などを電子メールで受け取り、 コメントなど付けてホームページに載せておけば、次年度の学生の参考にもなる。  提出された課題結果についても、良い例だけでなく悪い例をホームページに残すことで、 これまた次年度の教育に参考になることが考えられる。   学内回線状態が悪いと教室でホームページが見られないこともある。他にも、先月 まで見られた海外のページがある日突然サービスを止めて見られなくなったりする ことがある。そういうことを見せるのも、インターネットは万全ではないことを教える 一つの教材と考えられる。 4.個人のPCでの利用に関するいくつかの試み  大教室で多数の学生にホームページを見せるのではなく、個人が自分の研究室や私有の PCで、この教育用ホームページを利用する方式も行っているので紹介する。  大学院の講義で、毎回与えられる課題に対して回答の提出状況をホームページに、最新 情報を掲示することで、徹底できる。また、補助資料の計算プログラムや図表や前年度の 模範解答などをホームページに提示しておくことで、教育効果をあげている。  卒業研究の研究室学生の特別ゼミでも、このホームページを利用して、補助資料や模範 解答などを提示している。研究室の学生にはホームページ作成法(html言語)を教え ているが、昨年度の学生の作ったホームページの例や簡単な実例を、ホームページにも載 せておいたら、昨年度3名の作成者に対して、今年度はすでに倍以上の学生がホームペー ジ作成に成功している。これは学ぶための資料がだんだん整備され、それにともなって教 育効果が上がっていることを示しているのである。 特別演習1(研究室の4年生対象 前期) 第1回目 平面トラスの剛性マトリックスの誘導  第2回目 平面トラスの計算例1  第3回目 平面トラスの計算例2  第4回目 梁の剛性マトリックスの誘導 第5回目 分布荷重を受ける梁の荷重項  第6回目 連続梁の計算例  第7回目 平面ラーメンの剛性マトリックスの誘導  第8回目 平面ラーメンの計算例 第9回目 多質点構造物の固有振動解析  第10回目 構造解析のFORTRANプログラム  第11回目 1質点構造物のDuhamel積分 第12回目 多質点構造物の地震応答解析 構造工学特論(博士前期課程 前期) 第1回目 1次不静定の格子桁の解法  第2回目 弾性支点上の桁  第3回目 ホンベルクの解法 第4回目 純ねじりを受ける桁 第5回目 そりねじりを受ける桁 第6回目 立体骨組の剛性マトリックスの誘導 第7回目 変位法による格子桁の計算 第8回目 2次元弾性問題の基礎理論 第9回目 平面応力と平面ひずみ問題における応力ひずみの関係  第10回目 2次元応力問題の剛性マトリックスの誘導  第11回目 2次元応力問題の計算例 第12回目 平板の曲げ問題の基礎  第13回目 平板の曲げ問題の剛性マトリックスの誘導  第14回目 平板の曲げ問題の計算例  第15回目 補足 5.利点と欠点  この方式の利点と欠点を列記する。 利点 ・新しい刺激を与えるメディアとして使える。 ・毎年の教材資料が効率的に整備され改善できる。 ・画像を見せるときなど、黒板、スライド、OHPなどを別に操作せず  ひとつのメディアですませることができる。 ・作成者みずからの思考活動を高めることができる。 ・自己評価の資料を作成することができる。 欠点 ・LANや機材設備に経費がかかる。 ・教室の管理運営に人手がかかる。 ・ネットワークの管理運営に人手がかかる。 ・著作権の問題を考える必要がある。 6.あとがき  ホームページを教育研究に利用することは、学生の教育効果を上げるが、同時に教材を 作成する教官自身の反省と考察と編集の機会を与えてくれるものである。これは教官の自 己評価の資料となり、同じような専門分野の教官との情報交換にも役立つ。著者らは、別 の自己評価資料として現在、全学共通教育用の情報処理に関する教科書を作成中である。 この教科書が完成して実際に使用した時の、報告を次の機会にしたいと考えている。

OHP原稿その1(タイトル)

平成11年度情報処理教育研究集会