国際結婚、その光と陰についてメモをまとめてみます。

現代日本で多いのは、結婚難で日本人男性がアジアからの花嫁を迎える場合
高い教育を受けたが日本に適当な居場所を見つけられず欧米男性と結婚する日本人女性
のケースという。

日本人男性がアジアからの花嫁を迎える場合 は、日本人女性をパートナーとして
見つけられなかった日本人男性と、日本人の経済力をあてにしたアジア人女性の
利害が一致したところからはじまっている例が多い。

一方、欧米男性と結婚する日本人女性には、 留学など経験して高い学歴をもっている
女性が多い。いわゆる自立した女性として、イコール・パートナーを探しても、
適当な日本人男性を見つけることが難しい。

女性に対してやさしさだけを求めてくる男性は多いが、人生について真面目に話し合う
男性は少ないからという。
そして、その結果、自立した日本人女性は、アジアの男性ではなく、
欧米の男性をパートナーとして求める場合が多い。

生まれも育ちも違う者同士が結婚するのだから、
それぞれに問題はありそうだ。
結婚したもの同士が協力して幸福な結婚生活を続けていくためには
やはり秘訣があるだろう。ここでは普遍的なものをさぐる。

結局は、人間が結婚生活をおくりながら自立していくことが大切である。
ある体験者の指摘する、国際結婚の4つのポイント。
言葉、法律問題、宗教、アイデンティティ

言葉
国際結婚に「目は口ほどにものいわず」はあてはまらない。
家庭生活をするのは、たとえれば毎日が戦争である。
相手との関係において、自己主張して攻撃したり、守ったり、妥協したり。
それを毎日あきてもくりかえさないといけない。
日本人の得意な阿吽(あうん)の呼吸は、国際結婚には通じない。
頼るものは言葉しかない。

女性が結婚したら国籍が変わるものだと思っている日本人は多い。
昔はそうだった。しかし、戦後の国籍法によって、外国人と結婚した日本人女性
も日本国籍を保留できるようになった。
そして、1984年の改正された国籍法によって、子どもは両親のどちらかが
日本人であれば、日本国籍がとれるようになった。子どもは両親の国のそれぞれの
国籍がとれて、成人になったら、どちらか一つの国籍を本人が選択するのである。

アイデンティティとは、自我同一性と訳されるが、私から言わせれば自己認識性
というものであろうか。若いときは自分が日本人であるという意識は少ないものだが、
海外で暮らしているうちに、日本人としての自己認識にめざめるものだとよく言われる。

その例として、私の読んだ本には、ある日本人女性のことを紹介している。
その日本人女性は米国人と結婚して、やがて子どもたちも独立したとき、
彼女は自分にむさなしを感じはじめたという。日本人の集まりにでかけるようになり、
日本食が食べたくなって日本食を食べる機会が増えた。

若いときは日本人であることを捨て、夫の国の人間として生きようと努力することは、
チャレンジとして人生目標だった。しかし、アメリカで長く暮らしても、
結局アメリカ人としてのアイデンティティを確立することはできなかった。

彼女は国際結婚して日本社会から離脱したようにして日本を出てきた。
そんな彼女がアメリカ人としての自覚を得ることは簡単でない。彼女をなんとか
アメリカにつなぎとめているものは夫と子どもでしかない。その子どもが
手を離れると、彼女のアイデンティティはどうなるだろう。

やはり、日本人としてのアイデンティティが彼女を支えてくれるしかないのだろう。
子どもが独立し親の手を離れ、夫が死んだとき、彼女は一人でアメリカに
生きていけるだろうか。
日本社会から離れて数十年、それから日本に帰ってきても、彼女を受け入れてくれる
家族はあるのだろうか。両親は亡くなっているか年老いている。実家の嫁との関係に
期待はできないだろう。

この本の著者は日本婦人であるが、夫との会話で、日本の男性がアフターファイブ
にも接待などのため帰宅するのが深夜になり、そういうことを毎日している
日本の習慣を問題にしたところ、東南アジア出身の夫から
そういう日本人の努力が今日の日本の経済発展につながったのだという
肯定的指摘を聞かされて驚いたことを書いている。
欧米人に言われて日本人も反省ぎみの猛烈サラリーマンの生活は、発展途上の国民から
良い面を見られている。いろいろな考え方を認めあうのが国際交流である。

夫婦の価値観の一致、あるいは互いの価値観の尊重ということが、
国際結婚だけでなく、日本人どうしの場合でも、結婚生活を長続きさせる鍵だと思う。
(石川幸子:国際結婚、サイマル出版を参考にした)