未来社、日本の民話10 信濃越中編 はばすて山 (婦負郡) その1 天竺の国 年よりの嫌いな殿さま 60過ぎた年よりを山に捨てさせた。 隣の国の殿さまの難題「でかい牛の重さを計れ」 家来は母親に聞く。牛を船に乗せる水のついたところに印をつける。 その印まで石を入れて後で石の目方を計ってみんな合わせる。 次の難題「くねくねと穴のあいている石の穴に糸をとおせ」 母親の答 片方の穴の口に甘い匂いの蜜を入れて反対側から 蟻に細い糸をつけて入れるとよい。 次の難題「色も毛並みも大きさも同じ馬が二頭いる。 どちらが親馬か見わけよ」 母親の答 まぐさをやって見ていればよい。先に食べる のが子馬 隣の国の殿さま、難題を三つとも答えたのは、なかなか知恵者 がいるらしい。攻めるのはやめよう。 ほうびに何でも欲しいものを与える。60過ぎの母親を 穴にかくまっているが許してほしい。以後年よりを山に捨てなくなった。 その2 60をすぎた母親を泣きながら山に捨てにいった息子 途中母親は木の枝を折って道に捨てる。 母親と別れたとき、母親が途中に捨てた木の枝を目印に 家に戻れと行った。息子はたまらず母親を家の連れ帰って 人に知られぬよう大切にした。 姨捨山 (更級郡) 山に父親を捨てに行く途中父親が木の枝を折って息子のために 帰り道を示す。父親の気持ちを思い家に連れ戻ってかくす。 殿さまからのおふれ。 灰で縄をなえ 藁を塩水でしめしてから縄をなう。それを焼けばよい。 次の問題 ホラ貝に糸を通せ 蟻をつかまえてこい。ホラ貝の先を明るいところに向けて 糸の先に飯粒をつけたものを蟻にくわえさせ放すとよい。 殿さまが感心してそれから年よりをすてることはなくなった。