インターネツトを介して自殺用に青酸カリを売買した 事件や、伝言ダイヤルを使った昏睡強盗。いずれも 若者同士の間で起きた。顔の見えない相手や、知り合 って間もない人を信じたいほどに、若者は寂しいのだ ろうか。 若者のインターネット利用率は急上昇しているという。 携帯電話やPHSも、今や彼らの必需品だ。 Eメールや携帯電話は、他人からの干渉も嫌うが、 孤独も嫌という若者にとって、実に都合の良い通信 手段。携帯では、邪魔されたくない時には電源を切り、 寂しくなると時間や場所を気にせずコールできる。 Eメールも、自分の都合で発信し、いつでも返事を読む ことができる。 これらは、「後腐れのない」人間関係を結ぶ手段に もなっている。頻繁に友人と連絡を取りながら、なお も次々と新しい出会いを求めさせるほどの寂しさとは 何なのか。 だが、後腐れのない関係で孤独がいやされるとは思 えない。一人、二人でも、誇りに思える友人の方が、 接する時間に関係なく自分の心を満たしてくれるはずだ。 物質的には飽和状態の時代環境で、自己を保つこと は難しい。しかし、今、孤独にもがいている人も、時代 に負けずに強くなって欲しい。互いに応援し合える友は、 必ずいると思う。
1999.1.13 朝日新聞の声