インターンシップ
平成12年の夏に盛岡公共職業安定所が主催したインターンシップについて
報告会に参加したので、メモとして書いておきます。
盛岡公共職業安定所・盛岡学生職業相談室がまとめた総括 学生からみた体験学習講座(インターンシップ)での学習目標 ・現場でどのように大学で学んだ学問が生かされているかを学ぶ。 ・日常の大学生活では学べない社会、会社のルールを勉強する。 ・事前研修会で学んだこと、挨拶や社会人としての行動を実際に実行する。 ・働くことを体験し、これから取り組んでいく就職活動に生かしたい。 ・どの専門分野を勉強すればどのように社会に貢献できるかを学び、専門分野を選ぶときに役立てたい。 体験学習講座の内容には、参加者の8割以上が満足したと回答した。 多くの学生が、 インターンシップ・学習体験講座が良かった もっと早くこの制度を知って就業体験をしておきたかった 学校で習うことのできなかったことを学ぶことができた と述べている。 満足できなかったとの回答には、期間が短かったこと、初めてのインターンシップで 事務所の考え方・準備が十分でなかったことなどが上げられている。 受入企業・団体から報告 1.インターンシップ・体験学習講座を受け入れた目的・きっかけについて ・インターンシップの主旨に賛同した。 ・(県人事課)学生に対して、県業務への理解を図るとともに、県民生活に深く関わり のある業務を体験させることにより、将来の幅広い生活設計の検討に寄与する。 ・社会的な二−ズが高まってきたこと。 ・受け入れる当社の指導面での自己研讃として受け入れた。 ・当社の業務内容を広く知っていただくために。 ・有能な人材が育ち、岩手県がより発展するために。 2.事故等トラプルはなかったか ・受け入れていただいた16企業・団体で事故・トラブルとも皆無であった。 (これは各受入先の事前の指導と期間中の注意によるものと感謝している) 3.今回、受け入れていただいて良かった点 ・最近の学生の動向が把握できた。 ・カリキュラムの編成に当たって、自分達の業務を見直す良い機会となった。 ・若手社員が業務の指導を行うことにより、自己の業務を再確認し、自己啓発につながった。 ・職場内の活性化の一助となった。 ・現在の若者・学生の姿がほんの少しではあるが垣間見ることができた。 4.インターンシップ・体験学習講座に当たって苦労した点 ・事業の実施に際しての事務処理が煩雑。今後改善を希望。 ・期間が5日間と短い。カリキュラム作成に苦労した。工学系はもとより、文系とされ る受け入れ先でも出ている。短大生の受け入れ先でも指摘している。 ・受け入れ部署の協力を得るのが困難であった。 5.学生の仕事に取り組む姿勢はどうだったか ・いずれの受け入れ先でも、学生が真剣に真面目に取り組んだとしている。 ・黙々と作業をするなど好感を持てるが、反面おとなしく質問が少なかった。多少遠慮 がちの部分があった。『もう少し、積極的に行動してもいいのではないか』と指摘し ている。 6.今後もインターンシップによる学生を受け入れていただけますか O16企業・団体では次のように回答している。 受け入れ可 8 人数・学校限定で受け入れ可 3 依頼があれば受け入れ可 2 可能な限り応対する 1 7.この制度についてどう思われますか ・企業では予算・スタッフ不足である。そのあたりについて考慮を。検討してほしい。 ・学生一人が1社だけでなく、もっと多くの体験の機会を! ・大学側は受講生に単位の付与をすべきである。 ・労働の対価は不要。だが、職場までの交通費や食事(昼食)代程度は支給すべきもの ではないか。 ・受け入れ側にとっては負担が大きいが、企業または業界にとっては今後につながる ことと思う。 ・もっと県内の企業が協力して、学生を育てることにより、企業のレベル向上につなが ると思われる。 ・(県)学生・企業および学校の三者にそれぞれにメリットがある制度であるが、労働 省事業として企業メリットを考えた場合、本来的に本事業は受け入れ機関として、 民間企業の拡充をはかることが必要と考える。県においても、関係する企業等に対する 受入れ依頼等の協力を行っていきたい。
・企業は、IQや学歴などの知的能力、資格やスキルといった技能・技術的能力を評価のモノサシとしてきた。 ・企業人(一般社会)として必要な能力は自己信頼性、共感性、感情安定性、自主性、 積極性といった対人特性の高い人が営業成績優秀といった結果がでている。 技術者といえどもリーダーになったひとは態度能力がたかかった。 ・新入社員のみなさんは希望の会社に入ったとしても、必ずショックをうけるもの である。新入社員は2重の意味で文化の迷い人になる。慣れ親しんだ若者の文化、 大人に移行するときの迷い、会社、業界ごとの迷いなる組織文化も学習する必要あり。 ・1週間という短い期間で企業体験をどのように体験してもらうかというのが、悩みの 種であり、効率を考え事前のマッチングを行う。 ・教育の原点は社会に役立つための人作りであるので、この1週間でお預かりいた だいた学生に如何にモチベーションを与えるかであった。 ・体験学習Curriculumを作成し指導方針整理する。 ・学生達の感想文からのとくに体験として印象に残った点について整理すると会社 というものを考えるときインターネットで会社概要をしらべ「どんな部門があっ て、なにを作っていて、売上がいくらか」などを他人事のように考えていた。実 際会社にはいり、会社がひとつのコミュニュテイであり文化をもっている。とい うことを知り、会社というものを極めて現実的にとらえることができた。また、 臭いや、体力が必要であるなどは講演会を聞いたとしても分かるわけでなく、イ ンターンシップだから体験できたことである。今回のインターンシップは百聞は 一見に如かずでイメージと現実のギャップに発見だらけであった (学生A) ・会社の外見は汚れていて立派な製品を造っているようには見えなかった。このよ うな会社でインターンシップをすることに不安を感じた。また、立派な商品を世 に出している会社とは思えなかった。しかしインターンシップを終えるに当り、 自己の考えを改めることになった。会社では大学及び大学院で得たスキルを存分 に発揮されるものだと考えていた。会社(社会)で必要とされる能力は態度能力 である事を知った。また、次に感じたことは責任感の強さであった。製品を作る に当りいちいちくどいほど確認をしている姿を何回も目撃した。部品が何千、何 万個と製作するのを考えると、気の引き締まる自分がいた。また、時間に関する 感覚の違いであるが、時間内はきちっと仕事をして、休み時間は別人のように休 む。金を稼ぐというのはこのようなことかと認識をあらたにした。会社というの は無機的に感じるが、実はひとの集まりで、いくら機械などをつくっていても、 その奥の相手は人であり、大事なことは、一人一人の考え方であり,会社も人も外 見でなく、中身であると思いました。(学生B) ・ 五日間のインターンシップを通して現場での作業が本で見るよりかなりわかり 易く忘れない「百聞は一見に如かず」であった。会社は大きな家庭のように感じ た。新入社員をラインに立たせて、大家族の一員にしていく手法は参考になった。 大学で唯に単位を取ると言う考えを改め、将来自分の仕事がうまくいくように、 勉強のみではなく、社会性、共感性、活発性を養成し頑張りたい。(学生B)
・企業の参加の動機としては 企業の宣伝(PR) 社会貢献 であった。 ・受入れ決定の経緯 学生の意向によって決まった。夏休み期間中に自宅から通勤のできる範囲で自分の 興味の持てる体験をのぞんでいた。 ・期間と諸条件 夏休み期間で1週間という期間は企業にとっては適切な時間配分である。 ・力リキュラムの決定 企業としては工場の物つくり体験するカリキュラムを組んだ。 ・実施期間中に注意したこと 参加した学生は怪我および希望の職場があるのかということについて心配した。 ・成果は学生が残した書類から確認する。参考例として企業人としての心構え、学生 の大学での経験は企業においてどのような位置にあるのか、ここ2〜3年前に入社 した先輩より学生と企業人の差異について意見を聞く。 ・会社トップの前で研修会の成果を発表し、企業とはどのようなものであるか、また、 企業はどのような人材を望んでいるかなど懇談をした。 ・自分は化学が得意と考え応用分子化学を専攻したが、表面処理技術、環境中心の体 験のなかで、物理・生物・化学・飲み会(コミュニケーション)などが混在したも のが企業体験(経験)であったとの感想をのべられた。 ・専門外の専門と呼ばれるように、自己の大学等で学んだことでなくとも、企業では 自己研饌し、専門外であってもプロになるくらいの気構えが必要であることも感じ たようである。 ・インターンシップ学生を受け入れるに際して特に注意すべき点 イ)企業体験のなかで何を目的に来るのか ロ)企業という体験そのものを目的に来るのか ハ)自己の専攻する学問の延長にあるために来るのか 二)特に興昧のもてることを受入れ企業が行っているので来るのか ホ)単位取得が目的で来るのか へ)将来企業に就職しようという目的で企業の雰囲気を昧わうのに来るのか 企業側として受け入れるにあたって学生の意志を確認し、ミスマッチがあっては ならないので事前に学生の意志を確認する手段(電話、面接、書面)をもって確認したい。 ・インターンシップ学生を受け入れることによる企業側のメリット イ)企業の宣伝効果があると考えている。 ロ)インターンシップで企業での体験をした学生が入社を望むときは有利になる であろうと考えている。特別な面接等も不要で本人の資質も把握できているので。 ハ)企業内部で大学生を有している親たちの刺激になる。 二)現在東北でインターンシップに参加している大学が少なく、従業員への社会 動向の啓発につながる。 ・インターンシップ学生を受け入れるについての大学側への要求について イ)企業に来る際の服装については極力職場に来るという服装を指導して頂きたい。 ロ)企業には就業規則があり時間に関する考え方を学生に指導して頂きたい。 ハ)大学は公的機関であるがゆえに民間会社との価値観についての差があると考 えるので、言葉の使い方に注意するように指導して頂きたい。
企業の感想
・企業は即戦力を求めている。学生の実力のないのにあきれた。
・大学はもっと実用的なことを教育してほしい。
・大学生を見ていると躾ができていないことに驚かされる。
・きちんと挨拶のできる体育系の学生はよい。
大学の感想
・インターンシップは現在、労働省、通産省、県地域産業センター(旧テクノポリス財団)
などからの要請があり、受入側としての大学では、対応が大変である。整理して一本化してほしい。
・挨拶をすることとか遅刻をしないとかの躾は、単位認定にはなじまない。
・インターンシップの単位認定にあたっては、他の科目の単位との整合性が必要で、
事前指導、事後指導、レポートなど、チェックポイントが必要である。
・岩手県だけでなく、盛岡市も受け入れてほしかった。北上市や花巻市は受け入れてくれた。
・大学は即戦力になることを教育するよりは、将来のびるための基礎力をつけることを目標にしている。
・目先の就職などにとらわれず、若者を理解したり、自分の会社を見直す機会としてとらえてほしい。
・インターンシップを受ける学生も、社会を知り自分の可能性を発見する場として、フランクに挑戦してほしい。