グーテンベルク博物館3階に日本の展示がある。
そこには世界最古の印刷物「百万塔陀羅尼教」がある。
陀羅尼は梵語 dharani の音訳で、仏教経典の呪文を意味する。
称徳女帝は764年の恵美押勝の乱の平定後に、小三重塔百万個を造り、
その中に「無垢浄光大陀羅尼経」の中の「陀羅尼」を印刷したものを収め、
奈良を中心に十大寺に寄進した。
この仕事は770年に完了したことが「続日本紀」に記録されている。
これが印刷物の最古のものと考えられている。
幅はおよそ5.4cm、長さは15〜50cmほどである
しかし、当時の中国文化圏のことを考えると、本家の中国ではさらに古くから印刷が
行われていたであろう。しかし戦乱のため中国には770年以前の印刷物は残っていない。
しかし、1966年に韓国慶州の仏国寺の釈梼塔から「無垢浄光大陀羅尼経」の全文印刷が
発見された。
経典にみえる則天文字(則天武后が690年ごろに作り、705年まで使用された)や
704年ごろ成立した「無垢浄光大陀羅尼経」が新羅に伝わり、この地で印刷された
ことを推定するなら、日本の「百万塔陀羅尼」の印刷より古そうである。
中国では石碑に経典を彫り、それを写しとった。
後漢末に道教徒のあいだでは特殊な文様を捺印した護符が作られるようになり、
その影響を受け仏教徒も供養のため「印仏」を作った。
これは小さな仏像をいくつも1枚の紙に捺印するものである。
このような護符や「印仏」の捺印から木版印刷へと発展したと思われる。
捺印では大きな紙面に文字その他を写しとることが困難なので、
版木を下にして墨を塗り上から紙をあてて写しとる印刷術が考案されと思われる。