サグレスさんに聞いた生物の分類

お尋ねの件ですが、最新かつ簡単な分類というのは、ちょっと難しいのですが、やってみますね。
以前は、生物は動物界・植物界の二界に分けられていましたが、今は五界に分けることが多いのです。
五界とは、人により分け方が違う場合もあるのですが、
動物界・植物界・菌界・原生生物界(ここまでは真核生物)モネラ界(原核生物)です。
菌界というのは真菌類、つまりカビやキノコの仲間です。
モネラ界はごく大まかに言うと古細菌・真正細菌の二つに分けられます。
古細菌の方は、メタンを生成するグループや、高温・高塩分の所にいるようなちょっと変わった細菌類で、
DNAの性質などが我々真核生物と近いことから、真核生物の主な祖先であろうと言われています。
真正細菌の中に、水素細菌や大腸菌、根粒菌や結核菌など、人間とも密接な細菌が含まれています。
また、シアノバクテリア(以前は藍藻と呼ばれていました)も、真正細菌の中に分類されます。

ちなみに、ワインなどお酒を造る酵母は、細菌ではなくカビやキノコに近い真菌(つまり真核生物)です。
麹菌も、コウジカビですので真菌です。
乳酸菌・納豆菌・根粒菌・結核菌・コレラ菌・赤痢菌・大腸菌は細菌(真正細菌)ですが、
抗生物質を作り出すのはやはりカビの仲間の真菌類です。
また、毒キノコも真菌です。毒キノコは、間違って人が食べれば確かに害がありますけれど、
例えばテングタケ類などは、シラカバやマツの仲間、ブナの仲間と共生する菌根菌で、
樹木の生育には重要な役割を担っています。

生物の分類には色々な考え方があり、この五界説も便宜的なものです。
人によっては、すべての生物は真正細菌と古細菌の二つに分ければ良いのであって、
我々真核生物は全部古細菌の中に入れてしまえばいい、という乱暴な説を唱えたりもしています。
また、原生生物界や植物界もいささか錯綜した世界です。
葉緑体を持つ単細胞の鞭毛虫・ミドリムシは、原生生物(真核で単細胞)に入れるべきか、
はたまた植物に入れるべきか? 
葉緑体の元になった光合成する細菌と1回だけ共生した緑色植物と、
異なる系統の細菌と共生した単細胞生物がまた別の細胞と共生し、
都合5回も共生に共生を重ねた褐藻類(ヒジキやコンブの仲間)を、
同じ植物界に入れるのは間違っているのではないか?
など、まだまだ分類体系は落ち着きそうにありません。

補足です。
真核生物とは、細胞がでっかくて中に核という構造があり、核の中にDNAがぎゅうぎゅう
折りたたまれて入っている生物です。
真核生物の細胞には、核の他に、ミトコンドリア(酸素呼吸=エネルギー発生の場)や、
さまざまな袋状構造・膜状構造があります。
我々動物や植物、カビやキノコなどの真菌、原生生物はこちらに当たります。
一方原核生物は、細胞が小さく、その中に核などの構造はなく、じかにDNAが入っています。
ミトコンドリアもなく、酸素呼吸をする場合には細胞膜の一部を使って行います。
細菌類はこちらに当たります。 
(2006年01月14日 (土) )  




我々動物、植物(陸上植物と海藻)、真菌(カビやキノコ)、原生生物(アメーバやゾウリムシやミドリムシなど)は、
核のある大きな細胞(概ね1/100〜1/10mm程度)から成り立っています。
核の中に、遺伝子の本体であるDNAが、何本かに分かれた染色体として存在しています。
このタイプの細胞を「真核細胞」と呼びます。
真核細胞の中には、エネルギー産出の場であるミトコンドリアという小さな構造があります。
また、植物と原生生物の一部(光合成をするもの)は、葉緑体という構造も持っていて、そこで光合成を行います。
一方で、我々真核細胞を持つ生物(真核生物)より起源が古いのは、核のない小さな
(1/1000〜1/100mm程度)「原核細胞」を持つ原核生物でして、この細胞の中には環状の
DNAが1本、直に入っています。
原核生物は、DNAの塩基配列などいくつかの点が異なる、真正細菌と古細菌という2つのグループに大きく分かれます。
  真核細胞を持つ真核生物  動物、植物(陸上植物と海藻)、真菌(カビやキノコ)、原生生物(アメーバ)
  原核細胞を持つ原核生物  真正細菌(大腸菌、根粒菌)と古細菌(好熱菌、メタン菌)

さて昔々の大昔、真生細菌の中から、光合成をする能力を持った者が進化しました。
それがシアノバクテリア(藍藻ともいう)でした。
光と水さえあればどんどこ栄養(有機物)が作れる光合成という凄いシステムを獲得
したシアノバクテリアは、爆発的に増殖しました。
それまでの地球の大気には、遊離酸素がなかったのですが、シアノバクテリアの光合成の結果、
水が分解されて生じた遊離酸素が水中にも空中にも満ちあふれました。
すると今度は、この酸素を利用して有機物をとことん(二酸化炭素と水に)分解することによって
最大限エネルギーを獲得する、「酸素呼吸」というシステムを持つ好気性細菌が、
真正細菌の中から進化してきました。
この好気性細菌のある者が、古細菌のある者の中に入り込んで共生するようになりました。
これが真核細胞の起源です。そして共生するようになった好気性細菌が、やがて
ミトコンドリアになったのです(ミトコンドリアには原核細胞とよく似た環状のDNAがある他、
いくつも共生の痕跡を残しています)。

真核生物のある者は、自分の細胞の中にシアノバクテリアを取り込み、共生するようになりました。
この取り込まれたシアノバクテリアが、葉緑体の起源です。

現在、シアノバクテリア以外で光合成をする生物(真核生物)は、陸上植物・海藻(紅藻、褐藻、緑藻など)・
葉緑体を持つ単細胞生物(ミドリムシ類、珪藻類、鞭毛藻類など)、というように、
多彩な顔ぶれです。
これらは色がかなり違うのですが、それは持っている葉緑体の起源となったシアノバクテリアが、
それぞれ違うタイプのものだった、という事を示しています。
陸上植物の直接の先祖は、海藻の中でも鮮やかな緑色をしている緑藻類(アオサやヒトエグサ(青海苔の原料)の仲間)です。

また、葉緑体の起源となったシアノバクテリアの違いだけではなく、「共生の回数」もそれぞれ異なっています。
つまり、シアノバクテリアが真核細胞と共生し、葉緑体となるわけですが(この段階を「一次共生」と呼びます)、
今度はその真核細胞が他の真核細胞に取り込まれて2重に共生する、ということが過去に起きているのです
(これが二次共生)。
一次共生だけの場合、真核細胞の中で葉緑体を取り囲む膜は二重ですが、
二次共生だと三重、三次共生だと四重・・・、という風に、葉緑体の外側が何枚もの膜で取り囲まれるようになります。
褐藻(ワカメやコンブやヒジキなど、茶色の海藻)の葉緑体は、四重だったか五重だったか
、随分たくさんの膜に包まれていて、一旦はシアノバクテリアを取り込んだ細胞が、別の細胞に取り込まれ、
さらにまた別の細胞に取り込まれ・・・、という風に何度も共生が起きたことを示しています。
実際、膜と膜の間に核の残骸(核様体)が残っていることなども、繰り返し共生が起きたことを示しています。
そうやって出来上がった褐色の単細胞の藻類から、現在の多細胞の褐藻類が進化してきたと考えられているわけです。
(2007年11月05日 (水) )