【チョコレート】 スペイン人が見たのは原住民が飲んでいたチョコレートだった。 やがて、その飲み物は固形のお菓子に変わり、世界中で愛される食べ物となった。 山登りの時などチョコレートを食べると元気が出る。 「チョコレートの歴史」 樋口幸子訳 河出書房新社 チョコレートとカカオ(チョコレートの原料)の歴史を書こうとした ソフィー しかし、彼女は仕事半ばで死んでしまったから 夫マイケル・コウが彼女の後をついで書く。 チョコレートは食べ物ではなく、飲み物だった。 カカオ豆からチョコレートが作られる。 イギリス英語では、カカオ、チョコレート、ココアはおなじものをさす。 アメリカ英語では、ココアとはオランダ人クンラート・ファン・ハウテンの発明した脱脂粉末のこと(たぶん日本のココアも)。 Theobroma cacao 神々の食物カカオ リンネが付けた。 北緯20度と南緯20度の間でしか実を結ばない。 最低気温が摂氏16度以下の土地には適さない。 1年中水分を必要とする。 発酵、乾燥、焙煎、風選の手順 発酵させるため、果肉に包まれた種子を鞘から取り出す。 種子にくっついた果肉はどろどろに溶けて流れ落ちる。 種子はこうして一度は発芽しながら、高温としだいに高まる酸度により 死んでしまう。 発芽は必要である。発芽しない豆から作られたものは、チョコレート 独特の風味がないから。 カカオ豆 しばらく寝かせてから乾燥させたニブ (殻をむき、胚を取り除いた豆)は 重量の半分以上が脂肪である。 オランダ人クンラート・ファン・ハウテンが発明した 機械処理によって ニブからとりだされた脂肪分はカカオバター(ココアバター)と呼ばれ あとに残る固形物がココアである。脱脂粉末のこと。 カカオバターは、高級チョコレートを作る以外に 化粧品や医薬品など様々に使われる。 ホワイトチョコレートにはカカオバターだけが使われる。 チョコレートにはカフェインが含まれる。 カカオ豆 コロンブスはなんと4回目(最後)の航海で マヤ族の交易用カヌーの積み荷の中にあったのが最初。 メキシコのアステカ族の間では、チョコレートが飲み物であり 通貨であった。 スペイン人がカカオについての知識やカカオという言葉を 習得したのは、ユカタン半島や中央アメリカに済んでいたマヤ族からである。 脱線 メキシコのオルメカ文明(BC1500-400)の巨石人頭 彼らはカカオを栽培していたかもしれない。 ニシュタマリゼーション ニシュタマリとは、トウモロコシの粒の皮をとった、中の粉の練り粉状をさす言葉。 トウモロコシの粒と石灰や木杯を一緒に煮て一晩冷ましておくと 果皮がはがれるので洗い流す。 グアテマラ北部とユカタン南部の密林 マヤ文化 チョコレート飲料 マヤの習慣として、婚約や結婚の儀式で チョコレートを使う習慣があった。 アステカ族 戦争に長じていた。アステカ帝国をうちたてた。 修道士サカグンは布教をすすめるため 彼らを理解するのに彼らの言葉を覚えた。 その結果、原住民たちから カカオとチョコレートの使用に関することも聞き出した。 彼らは、チョコレートに 蜂蜜だけでなく 苦みをある香辛料や胡椒のような香辛料などを まぜて飲んだりした。 コロンブスのあとにやってきたスペイン人たちは アステカの女性を下女にして料理を作らせたりした{中には彼女を妻や妾にした男もいた}。 やがてスペイン人女性が、アステカの女性たちから 教えられたのかチョコレートを飲むようになった。 しかし、男達は飲もうとしなかった。 昔から女性はチョコレート好きなのか。 彼らは原住民のような香辛料の混ぜ物は好まず やがてチョコレートを板状にしておくことを思いついた。 板状にすれば保管も運搬も容易である。 この以上の物にお湯と砂糖を加えて飲料とするようになったらしい。 アステカやマヤの住民達にとって 神聖な飲み物であったチョコレートは スペイン人たちにとって 薬用の飲み物とされた。 やがて嗜好品にと変わっていった。 チョコレート飲料がスペインに渡り、さらにヨーロッパ諸国に伝搬するうえで うまれた重要な新技術。すり潰したカカオを板状にし、それに熱い湯と 砂糖を加えれば、チョコレート飲料ができあがる。ある史料によると 発明者はグアテマラの修道女とされているが、アステカの戦士たちが、行軍中 に一種のインスタント・チョコレートを作って飲むために、このような ウェハースを支給されていたので、それを見たスペイン人たちが カカオ液を乾いた固形の製品にすれば、貯蔵したり船で輸送したりするのに 便利と考えて、こうしたウェハースを利用するようになったのだろう。 チョコレートがヨーロッパにもたらされた 正式な記録は 1544年 ドミニコ会士が暴力ではなく協調によって 布教を重ねた結果、平穏な信者が増えたので マヤ貴族をともなってスペイン国王フェリペ皇太子 を訪問したときのこと。 チョコレートを入れた容器が宮廷に持ち込まれた。 強い風味を持つチョコレートは、密かに毒を仕込むのに うってつけの飲み物。 自分を裏切った男に毒入りチョコレートを飲ませ 死んだのを見届けた貴婦人。 チョコレートは聖職者が断食中にとってよいか否か。 {四旬節:聖灰水曜日から復活祭前夜までの40日間} 聖職者の間でも大論争。生産地のメキシコでは 貿易の経済的理由があるから、チョコレートは飲んでよいとした。 アントニオ・デ・レオン・ビネロは、チョコレートに滋養のある ものを多く加えると断食に飲んではいけないが、 ただの水で溶いたチョコレートなら単なる飲み物だから 飲んでよいとした。 イギリス人は、アルカロイドを含む3つの飲み物 紅茶、コーヒー、チョコレートをほとんど同時に飲むようになった。 それぞれ、アジア、アフリカ、アメリカという 三大陸を原産地とした。 フィリピンではスペイン人によりカカオの木が植えられ カトリック教徒のフィリピン人は伝統的クリスマスの朝食に チョコレートが飲まれている。 フランス革命は カトリック諸国の教会と貴族の優勢を終わらせた。 産業革命は チョコレートを高価な飲み物から安価な食べ物へと変えた。 イギリスのクエーカー教徒の資本家フライ 1847 溶かしたカカオバターと砂糖入りココア粉末と混ぜる方法開発。 イギリスのクエーカー教徒の資本家カドバリー 1853 ヴィクトリア女王に納めるチョコレートの王室御用達業者となる 現代のチョコレートの作り方 3種類の工程で3種類の製品 ココア粉末 ブラックチョコレート ミルクチョコレート ココア粉末は、油圧を利用した油圧機でカカオバターを ほとんど完全に取り除くことにより作られる。 これは溶剤を使ってもできる。 残った固形分を細かく砕き、加熱しながら砂糖を加える。 ココア粉末を水と混ざりやすくするためにアルカリ化をする。 低脂肪のココア粉末は、水やミルクと混ざりにくいので 湿潤剤が必要たいていレシチンが使われる。 レシチンは植物性油脂の一緒である。卵黄にも含まれるが高価である。 普通は大豆から撮られる。レシチンはカカオバターの安価な代用品 としても使われる。 ブラックチョコレートを作るには 焙煎したカカオ豆を挽いて原液を作り 砂糖を非常に細かい粉末状にして、これらを攪拌機で混ぜ合わせる。 なお攪拌機は蒸気または熱湯で加熱される。 ミルクチョコレートを作る場合も、水分をほとんど除いたミルクを 加えるだけで、基本的な手順はブラックチョコレートと だいたい同じ。