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国立大学入学者選抜研究連絡協議会副会長 名古屋大学教育学部教授  村上 隆(むらかみ・たかし) ●センター試験改革 <大学入試における抜本的な解決策> 学力の二つの側面  aptitude(適性・素質)と achievement(学力・到達度) この2つの境界はあいまいである。 大部分の大学では学力・到達度を測ることを通じて、適性を測定していると思われる。 日本では、テストを作成し実施するための態勢、あるいはシステム作りが、 アメリカなどに比べると大きく遅れている。 アメリカにはACT(American College Test)という、まさに適性・素質と 学力・到達度の中間あたりをねらった全国テストがある。 年5回実施され、約100万人が受験している。 このテストを作成している組織の人員が常勤だけで950人、さらにその半数程度の 非常勤、さらに外部の出題者が極めて多い。 受験者の絶対的な学力がわかる。 日本の大学入試センターには100人ほどの人員が配置されている、その数はACTに 比べて極端に少ない。年間1回の実施。 実施のたびに平均点が大きく変動し、難易にバラツキがみられる。 センター試験改革は、独立行政法人化の道を選択すべき。 ●高校教育と大学教育 <求められる大学と高校の連携> 高校教育における「大学で何を学ぶか、あるいは社会で何をなすべきか」という前提 入学試験にあたり「ひとつの関門となる大学入試をいかにクリアーするか」という目的 この二者の間に、ある種の隔たりがある。 多くの大学で教養部が廃止された。 教養部が廃止されたから、従来専門教育を担当していた多くの大学人が、 高校卒業まもない1年生を教育するようになった。 1年生に対する少人数ゼミの開講 1年生の教育困難な問題点 大学への期待感が欠如している一方、早く専門を学びたいと思う。 ゼミや講義に対する接し方は極めて受身的であり、 形作られた体系的カリキュラムを‘きちんと教わる’という姿勢ばかりが目だつ。 大学教育は基本的には、‘できるだけ早く正解へたどり着く方法を学ぶ’ といったことではなく、 ‘正解のない問題を立て、それに多面的にアプローチして、 何らかの(多分、複数ある)解決方法を考える’ことである。 大学教員の多くは、1年生に対してこのことを理解させることに苦労する。 2年次または3年次になれば、こうした大学の教育スタンスを だんだん理解してくれるようになる。 1年生の不満 「出来上がった知識を与えてくれない」 「大学教員が1年生の自発性を期待している姿勢がともすれば放任的とみられてしまう」(早く答えを教えてほしい) 大学の目標 個性的人材育成 自分で問題解決する能力 (答えは自分自身で探せ) 大学における教育が「正解のない問題を発見し、その解決を模索する」ことにある。 受験期における学習はこれとはまったく正反対の「正解を早く見つけ出す」こと に集中する。 名古屋大学の教育学部で成功した入学試験 3年次編入学制度(大学あるいは短大卒業者対象で定員10人、 大学2年次修了者対象ではない) 入試科目は小論文・英語・面接だけ。 競争率は例年10倍を超える。 この制度で入学してきた社会人経験をもつ学生の中から、 大学院にトップクラスの成績で進学する者が現れはじめた。 3年次編入学制度 大学で学ぶ意欲のある学生を合格させる。勉学意欲がある。 普通の入学制度 偏差値が高く、受験科目でまんべんなく高得点をとった学生 を合格させる。入学後に意欲のない者がいる。 ●国立大学におけるAO入試 <入試における日本的風土> 受験学力とは別の、意欲とか問題意識の観点で選抜を行いたいという願望から 平成12(2000)年度から国立大学としては初めて、東北大学、筑波大学、九州大学 においてAO(アドミッション・オフィス)という組織が創られ、活動を開始した。 AOは、日本では、慶應大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)の例が有名である。 国立大学の今回のAOはこれほど丁寧なものではない。 今回のAOはアメリカからの輸入といってよい。 アメリカのスタンスはあくまでも大学の省力化と経費削減をねらったものである。 できる限り簡便な形で、よりよい入学者を青田刈りしようという目的がある。 従って、名門のハーバートやMITにおいてすら、入学辞退者がかなり多くでる。 日本の慶應大学においては、意欲と人物評価、それと本人の目的と 学部のそれとのマッチングに重点がおかれている。 しかし、これをあらゆる国立大学が実施する力量も余裕はない。 国立大学のAO入試が日本的風土の中に根づくには、なお時間がかかると思われる。 ●入試と情報公開 <建前の崩壊> 受験産業による自己採点の集計が、容易に入手できる現状では、 大学の序列化を招くという理由からの入試情報の公開否定論がある。 しかし、これからは日本全体が情報公開の方向に進むだろう。 ただし情報公開(得点の本人開示)が出願の前に行われるかといえば、 やはり難しいだろ。 受験産業によって行われている自己採点集計と違って、 絶対に間違いが許されないこと、さらに受験生の不利にならないことを 前提とするといったことから、 解答用紙のチェック等に膨大な時間と手間がかかり、 現状の組織と日程では困難と思われる。 しかし、早晩成立すると思われる情報公開法を考えれば、 選抜終了後の公開は、比較的早い時機に実現する可能性がある。

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