韓国ひとり旅

加藤公夫
連合出版

この本の著者は帯広畜産大学に留学していた韓国人と話をするうちに
韓国に興味をもって、とうとう一人で韓国旅行をした人の本である。
1980年代のことなので今読むと少し古いように思われる。
また訪問した土地も都会よりは農村を積極的に見学しているので
伝統的なものが残っている描写が多いかもしれない。
いたるところ著者の暖かい観察の目が感じられる。
良き韓国人の案内で貴重な体験をした本になっている。

両替したら、3万円が9万4700ウォンになったという。
これでいつころの旅かわかるだろう。
大使館に行って適当な案内人を紹介してもらうという文章を読むと
今もそうなのかと思ってしまう。
我々も日本大使館に行けば、相談に乗ってもらえるのであろうか。
こうして日本語のできる親切なガイドを紹介してもらった。

水原の市場で、カイコのサナギの佃煮を見つける。
この本には、はっきりと糸をとるときマユをゆでて糸をとる、
そうすると糸をとった後にサナギだけ残るから、そのサナギを
佃煮にして食べると書いてある。
このサナギの佃煮は日本でも買えるが、私もおそらくそういうことでは
ないかと思っていたが、この本で作り方が納得した。

ホテルで夜9時半に、知らない女性がドアをノックして入ってきた。
友だちがまだ部屋に帰ってきていないから、電話を貸してほしいと頼んだので
ドアに入れた。電話がすんでからも話しかけてきてなかなか帰らない。
そのうちにトイレを借りたりシャワーを浴びていいかと訪ねてくる。
シャワーを浴びてから、その女性はサービスをしてもいいと言ったそうだ。
こういうできごとを日本人は報告しないものだが、この著者は本に書いている。
相手にならないでいると、女性は食事を注文していいかと聞いてきた。
食べてきたからいらないというのに女性は食事を注文して、やがて食事が
運ばれてきた。食べっぷりを見て、よほど空腹だったに違いないと思った
著者は同情しながらも、食べ終わったらフロントに電話して、ひきとってもらう
ことにする。その電話で彼女は了解して、すぐ部屋を出て行ったという。

砂金掘りの現場を頼んで見学する。
ところどころ日本の砂金掘りと共通点があるので、期待どおりの見学
に満足したことが書かれてある。
農業の見学も、機械化こそ少ないが、土地の様子や作物の種類など
日本の農業とそう変わらず、だから順調に収穫しているだろうことが推定され
専門家として勉強になったようである。

訪問先で、先祖の朝鮮通信使の日誌を見せてもらうが
全部漢文で書かれてあったという。この復刻版を1冊もらってきた著者は
日本に帰ってから、知人の中国人に見せると、この中国人は
書かれている文章は中国人が書いたものであって、韓国人が書いたものではない
といってきかなかったという。
中国人も勘違いする漢文だった。