ある北朝鮮難民の告白
金龍華 (2003)窓社
講義で
「金日成主義はマルクス・レーニン主義の思想理論に基づいて生まれた」
と述べたため一生を台無しにしたキム中尉。
その講義を聞いた老参謀が
「ではマルクス、レーニンがいなかったら金日成主義も生まれなかったということか」
と疑問を抱き、キム中尉に問いただした。
そして政治思想面を取り締まる部署に告発したのだった。
キム中尉は逮捕され、若い妻にも何も知らされなかった。
「偉大な首領様の権威と尊厳をあらゆる方法で守るべき軍人が、
偉大な首領様の権威を犯した罪」で政治犯収容所に入れられた。
金日成に対する忠誠心を表すため
熊の肝を送ることにした。
人民軍の各部隊で
毎年金日成の誕生日の贈り物のために熊狩りをするので
熊は絶滅の危機に瀕していた。
やっと見つけた熊は立ち向かった来たので
銃を乱射すると、腹を割いたら
胆嚢が裂けてしまってつかいものにならなかった。
それではと高麗人参を地元民にないか聞いたら
50年物があるという。
部隊に連絡すると50年物では献上品として不十分であると
言われた。
金製の盃とスプーンと箸を作ることで話がまとまる。
兵士が帰省して実家から金を集めてきた。
金製の盃とスプーンと箸を2セット献上することができた。
こんな国「朝鮮民主主義人民共和国」(北朝鮮)にいたんでは不幸になるだけだと
決心して脱出し中国に逃げる。そこで中国籍の偽造旅券を手にして
韓国に入国する。
しかし、偽造旅券がわざわいして「新たな祖国」韓国に裏切られる。
役所の職員は、彼は中国人だから韓国に住めない、中国に送り返すの一点ぱり。
韓国は自分を救ってくれない、韓国にいたらますます不幸になると思い、
最後の逃げ場の日本に密入国する。
そこでも地獄は待っていて、悪名高き「大村収容所」で苦しめられる。
しかし、日本の人権団体や支持者が現れて、長い間の支援運動が実を結び
奇跡的に韓国の市民権を得て韓国に住むことができるようになる。
この著者は述べている。
昔から「東方礼儀の国」といえば朝鮮だ
と学んでいたが、日本に行って認識が変わった。
本当の礼儀の国は日本だと思う。
日本人は常に人に迷惑をかけないようにと気を配っている。
エスカレーターを上るときに一列にきちんと並んでいる様子や、
整然とバスを乗り降りする様子から、私は人に迷惑を
かけまいとする意識を強く感じたが、それこそが「礼儀」だと思う。
韓国に戻ってから、各団体に呼ばれて講演する機会も増えたが、
そこで私は決まってこういう話をする。
「私を人間として最後に救ってくれたのは、日本の人権団体や
日本に住む人々だった。私は『祖国探し』を長年続けて、
日本のおかげで14年ぶりに韓国に『安住の地』を得ることが
できた。歴史上の日本ばかりを見るのではなく、もっと現実の日本
を見るべきだ」
私は、日本のいいところも、悪いところも両方見ていくべき
だと主張しているだけなのだが、韓国の人々は、
日本の悪いところばかりを見ようとする傾向がある。
彼のような悲惨な目にあった脱北者が大勢いたのだろう。
そして国内外の世論の高まりによって、この著者は韓国民になることができた。