釜山の西方の鎮海(チネ)には日本海軍の軍港があった。それで沢山の桜の木が植えられた。
韓国が日本に併合された時代、日本人も朝鮮人もそれぞれ花見に来て楽しんだ。
第2次大戦が終わり朝鮮は解放され、桜の大半は日帝の残滓(ざんし)といわれ、
その多くは切られてしまった。
ところが、植物学者が、鎮海にあるワンポッナム(日本のソメイヨシノ)の
原産地は済州島であることを発表して、この桜に対する考え方が変わってしまった。
それではということで、鎮海をもう一度桜の名所にもどそうと、
在日韓国人たちに頼んでワンポッナムの苗木を送ってもらった。
中には、鎮海にあった女学校の同窓会で韓国をおとずれた日本人も
そこで頼まれて、日本に帰ってから桜の苗木を送った人もいる。
実はワンポッナム(ソメイヨシノ)の原産地は済州島であることを
1923年に論文としてに発表したのは京大教授小泉源一であった。
韓国の植物学者がこの論文を根拠に
日本原産ではなく済州島原産であると広めたのだった。
その小泉説に疑問をいだいたのが竹中要であった。竹中は済州島に行って
問題の桜の木があることを確認したがわずか1本しかなかった。
竹中はこの桜が雑種ではないかと推定した。
その根拠として、
ソメイヨシノは実ができにくい(種子ではなく挿し木で増やす)、
ソメイヨシノ他の桜より生育が早い(雑種強勢)
などをあげた。
戦後に竹中は国立遺伝学研究所の創設に関わり、細胞遺伝部長になる。
1962年に竹中は、ソメイヨシノは、エドヒガンとオオシマザクラの雑種である
という説を発表した。
エドヒガンとオオシマザクラの開花時期は異なる。
言い伝えによる江戸の染井の植木師の庭で自然交配してできたのではなく、
両種の分布が広く重なっている地帯から江戸に持ってきたのではないかと推定する。
そして両種が自生している伊豆半島南端が原産地であると推定し、
現地で自然合成でできたと思われるソメイヨシノ数本確認した。
この竹中説はDNA鑑定法で正しいことが証明された。
さて韓国の学者はどう考えているかというと、
ある学者はサンポッナム(ヤマザクラ)系とオルポッナム(エイシュウザクラ)の
雑種であるといい、
別の学者はサンゲポッナム(ミヤマザクラ)が片方の親ではないかと言っている。
したがって、厳密に言えば、小泉教授が済州島で発見したワンポッナム(ソメイヨシノ)
は、日本のソメイヨシノとは違う雑種である。親の桜の木の種類が違うから。
それでも、日本のソメイヨシノを韓国に持ち込んで、桜の名所にした
韓国の人は立派だと思う。美しいものは美しいのだから。