平成10年10月16日の科学談話会の例会
講師は県庁生活環境部環境保全課の
滝川義明課長補佐
演題は最近の化学物質問題(ダイオキシン等)について
でした。
この時流にあったテーマを講演してくださる講師はどこかにいないかと
講師を探したとき、前に工業技術センターにいた
現水沢保健所の菅原さんが
滝川さんを紹介してくださいました。
それは、ずっとさかのぼると、パソコン通信「ハイテクネットとうほく」時代からの
人のネットワークだったのです。
やはり人間のネットワークはたくさん持っていたほうがいいですね。
夕べの講演のいくつかのポイントを私なりに整理しておきます。
・世界で使用されている化学物質は約10万種類。日本では約5万種類。
・農薬、医療品、食品添加物、冷媒(フロン等)、プラスチック原料
・化学物質の功罪。除草剤によりそれまで農業の10a当たり51h労働が
3.5h労働に縮小され、余った労働力は日本の工業生産などに回された。
・環境への残留性、生物濃縮、人への蓄積性
・超微量での影響(長期間、低濃度暴露での健康への影響のおそれ)
・毒性評価:急性毒性、慢性毒性、発癌性、催奇性
・環境リスク:化学物質が環境中に排出され、人の健康や生態系に
有害な影響を及ぼす可能性
・環境リスクの評価が十分に行われていない化学物質も多い。
・ダイオキシンは炭素・酸素・水素・塩素が熱せられるとき意図せず作られる。
・ダイオキシンはベンゼン環(亀の子)の1〜4と6〜9の位置に
塩素が付いたものである。
・環境大気中のダイオキシンは岩手の測定値0.007〜0.17pg-TEQ/m/m/m
世界の目標値は0.8pg-TEQ/m/m/mである。
・ダイオキシンの摂取基準値は今後1〜4pg/kg体重/日になる。
・ダイオキシンは水に溶けず油に溶けやすいから魚に多く含まれる。
・魚が好きでタバコを吸う人がゴミ焼却炉の近くに住めば多量の
ダイオキシンを受けるかもしれない。
・ダイオキシンの毒性よりボツリヌス菌や破傷風菌の毒性の方が強いが
人工物質としては最も強い毒性をもつ。
・ダイオキシンは発癌性があると言われている。
・ねずみなどの実験でダイオキシンは赤ちゃんに奇形を起こす
ことがわかっている。
・動物実験ではダイオキシンは環境ホルモンのような働きをする
ことが報告されている。
・環境ホルモンとは、動物の生体内に取り込まれた場合に、本来、
その生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える
外因性の物質
・環境ホルモンは、科学的には未解明の点が多く残されているが、
世代を越えた深刻な影響をもたらす恐れがある。
・環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)の中でビスフェノールA、
ノニルフェノール、フタル酸エステル、DDTなどは女性ホルモン
のような働きをして、動物をメス化させる。
・貝類イボニシは有機スズ化合物で雄性化、個体数の減少が見られた。
・フロリダのワニはDDTで雄のペニスの矮小化、個体数の減少が見られた。
・オランダのアザラシがPCBで個体数の減少、免疫機能の低下が見られた。
内分泌攪乱作用の疑いのある化学物質(環境ホルモン) 物質名 用途 ダイオキシン類 非意図的生成物 ポリ塩化ビフェニール類(PCB) 熱媒体、ノンカーボン紙、電気製品 ポリ臭化ビフェニール類(PBB) 難熱剤 ヘキサクロロベンゼン(HCB) 殺菌剤、有機合成原料 ペンタクロロフェノール(PCP) 防腐剤、除草剤、殺菌剤 2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸 除草剤 雫石に埋められた除草剤 2,4,-ジクロロフェノキシ酢酸 除草剤 新庄霊園で使われたという アミトロール 除草剤、分散染料、樹脂の硬化剤 アトラジン 除草剤 アラクロール 除草剤 シマジン 除草剤 ヘキサクロロシクロヘキサン、エチルパラチオン 殺虫剤 カルバリル 殺虫剤 クロルデン 殺虫剤 オキシクロルデン クロルデンの代謝物 trans-ノナクロル 殺虫剤 1,2-ジブロモ-3-クロロプロパン 殺虫剤 DDT 殺虫剤 DDE, DDD DDTの代謝物 ケルセン 殺ダニ剤 アルドリン 殺虫剤 エンドリン 殺虫剤 ディルドリン 殺虫剤 エンドスルファン(ベンゾエピン) 殺虫剤 ヘプタクロル 殺虫剤 ヘプタクロルエポキサイド ヘプタクロルの代謝物 マラチオン 殺虫剤 メソミル 殺虫剤 メトキシクロル 殺虫剤 マイレックス 殺虫剤 ニトロフェン 除草剤 トキサフェン 殺虫剤 トリブチルスズ 船底塗料、漁網の防腐剤 トリフェニルスズ 船底塗料、漁網の防腐剤 トリフルラリン 除草剤 アルキルフェノール、ノニルフェノール、4-オクチルフェノール 界面活性剤の原料/分解生成物 ビスフェノールA 樹脂の原料 話題の給食ポリカーボネート食器 最近は缶コーヒーからも検出 フタル酸ジ-2-エチルヘキシル プラスチックの可塑剤 フタル酸ブチルベンジル プラスチックの可塑剤 フタル酸ジ-n-ブチル プラスチックの可塑剤 フタル酸ジシクロヘキシル プラスチックの可塑剤 フタル酸ジエチル プラスチックの可塑剤 ベンゾ(a)ピレン 非意図的生成物 2,4-ジクロロフェノール 染料中間体 アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル プラスチックの可塑剤 ベンゾフェノン 医薬品合成原料、保香剤 4-ニトロトルエン 2,4-ジニトロトルエンなどの中間体 オクタクロロスチレン 有機塩素化合物の副生成物 アルディカーブ 殺虫剤 ベノミル 殺菌剤 キーポン(クロルデコン) 殺虫剤 マンゼブ(マンコゼブ) 殺菌剤 マンネブ 殺菌剤 メチラム 殺菌剤 メトリブジン 除草剤 シペルメトリン 殺虫剤 エスフェンバレレート 殺虫剤 フェンバレレート 殺虫剤 ペルメトリン 殺虫剤 ビンクロゾリン 殺菌剤 ジネブ 殺菌剤 ジラム 殺菌剤 フタル酸ジペンチル フタル酸ジヘキシル フタル酸ジプロピル スチレンの2及び3量体 スチレン樹脂の未反応物 カップ麺容器に使われる n-ブチルベンゼン 合成中間体、液晶製造用