ラインの中流のブルグントの国に美しい姫クリームヒルトがいた。 父は世を去っていたが母ウオテは健在で、兄グンテル、弟ゲールノート、 ギーゼルヘルたちが国を守っていた。 さらにグンテルの叔父たちハーゲン、ダンクワルト、 辺境伯ゲールとエッケワルトなどが勇者としてひかえていた。 ライン川の下流のニーデルラントの国の国王ジゲムントにジークフリート というけだかい王子が生まれた。王子ジークフリートは武勇に秀でていた。 ブルグントの国はヴォルムス Worms にあった。 ニーベルンゲンの歌では、勇者ジークフリートは竜退治をする。 竜は西洋でも蛇の仲間なので虫の範疇にはいる。 これは実は日本でも、虫の中に昆虫も寄生虫も蛇も入れている。 竜(ドラゴン)を倒したジークフリートがクリームヒルトに求婚したのは ヴォルムス Worms であった。 この町はもとはケルト語でボルベトマグスという名であった。 ドイツ語の虫 Wurm に結びつけられ、この名になったのである。 Wurm: いも虫、蛆(うじ)、寄生虫 Wuerme: 竜 イランのバーバグの子アルダシールの伝説(ササン朝の始祖アルダシール) イラン東南部の町ケルマーンに七人息子のいるハフトヴァード(七人息子)と呼ばれた男 がいた。彼には娘がいて糸紡ぎが仕事だった。その娘がある日、リンゴの中にいた虫(ケルム) が糸巻きの中に落ち込んだ。そして、その虫のおかげで糸紡ぎの腕が上がり金持ちに なった。その大きくなった虫を箱に入れて大切に世話していた。 後にハフトヴァードは莫大な富をもって反乱を起こした。王アルダシールは討とうするが 虫のため苦戦をする。やっと虫を排除することができて反乱を鎮圧することができた。 ハフトヴァードの言葉の意味については諸説があるが、七人の従者がいたことは確かである。 この説話は絹の伝来の物語であることは有名である。絹の製法は秘密めいていて 絹貿易が信じられないくらい大きな利益をもたらしたのであろう。この虫とは蚕であろう。 そして、虫はウジ虫や蛇もさしたのである。ペルシアも日本も中国もドイツも同じであった。 ハフトヴァードは、本人も含めれば八頭の竜をさしている。そして、その町は ケルマーン(虫)と呼ばれたのであった。 (アジア遊学 第28号、 ドラゴン・ナーガ・龍 2001.6.5)