ニーベルンゲンの歌  後編

前編 「ジークフリートの死」

これに対して、後編は「クリームヒルトの復讐」となる。

とても残忍な殺害の連続で、読むにたえない(と訳者の山室静は述べている)。

したがって、ここではごくあらすじをかいつまんで紹介する。

フン族のエッツェル王は全ヨーロッパに鳴り響く絶大な権力をもつ王だったが
妃ヘルヒェを亡くしていた。

そしてこのフン族の王に、ジークフリートの未亡人クリームヒルトとの結婚を勧める者が
いて、王は自分は異教徒だから無理な話とは思いながらも、
辺境伯リウデゲールを使者としてヴォルムスに申し入れた。

ハーゲンだけはこの結婚に反対したが、ほかのものはみな賛成して、
ついにクリームヒルトもエッツェル王と結婚する決心をする。

クリームヒルトがフン族の国の王妃となってから13年たった。
その間にオルトリープを産み、この子は王妃のたっての願いでキリスト教の洗礼を受けた。
彼女は王に故国の一族をこの国に招待するように頼んだ。

エッツェル王の国からの使者の招待の知らせを受けて、グンテル王たちは招待を名誉に思い
妹クリームヒルトにも会えることを喜んだが、ハーゲンだけは強硬に反対した。
ギーゼルに、身に覚えのあるハーゲンだけは国に残ればよいだろうとまで言われ
ハーゲンも一緒に行くことにする。

途中ドナウ川の畔で、渡し守を探しに行ったハーゲンは仙女たちの水浴びに出会い、
彼女たちの衣を奪い彼らのフン族の国への旅を占わせる。

仙女たちが無事フン族の国に行けると占ったので衣を返したのだが、
衣を着た他の仙女たちが、フン族の国に着いたら不幸が待っているから
ここから引き返せと言い、宮廷牧師以外は誰も生きて帰れないと教える。

いまさら帰られず、ともかく仙女たちから渡し守を教えられ
渡し守にみんなをドナウ川を渡すように頼むが、言うことをきかないので
ハーゲンは渡し守を斬り殺し、自分で船を操りみんなを渡す。
最後に宮廷牧師を渡すとき、仙女の言葉を思い出し牧師をつかんで川に投げ込んだ。
牧師は泳ぎを知らないのに神の助けにより元の岸に泳ぎ着く。それを見たハーゲンは
仙女たちの預言の正しいことを悟る。彼は生還の望みを捨て渡し船をうち砕いた。

途中で、事情あってエッツェル王の許に身を寄せていた英雄ベルネのディートリヒが
一行を迎えにくる。そしてクリームヒルトはいまだ亡き夫ジークフリートへの嘆きを
捨てていないことを見抜いて、一同に用心するよう警告した。

一同は宮廷に着きクリームヒルトに迎えられた。
彼女はハーゲンに、なぜ自分のものであるニーベルンゲンの宝を持ってこなかったのかと
なじる。そしてみなの武器を預けるように求めるが、ハーゲンは拒絶する。
エッツェル王はハーゲンの名を聞くと、彼が子どものころ人質としてこの宮殿にいたことを
思い出す。

クリームヒルトは王弟ブレーデリンに美しい花嫁や領土や宝を与えることを約束して
ハーゲンを討つことを頼んだ。
ブレーデリンは従士1000名を率いて、ハーゲンの弟ダンクワルトが部下と食事を
しているところに乗り込む。しかし、ブレーデリンはダンクワルトに倒されてしまう。
こうしてフン族とブルグント側との戦いが始まった。

ダンクワルトから知らせを受けたハーゲンは、エッツェル王の大事な王子オルトリープ
の首をはねる。
戦いの中ディートリヒはエッツェル王とクリームヒルトを連れ家来とともに館の外に逃げる。
辺境伯リウデゲールも外に逃げる。

戦いは続いて多くの戦死者が出た。フン族は兵士の数も多く地の利があるため、
ついにブルグントの王たちは、エッツェル王に和平を申し込むが断られる。
そしてクリームヒルトは最後の手段として宮殿に火をかけすべてのブルグント族を焼き殺
そうとした。しかし、なお600人のものが生き残った。

辺境伯リウデゲールが姿を現した。クリームヒルトはかつて彼がエッツェル王の使者
としてヴォルムスに来たとき命にかけても彼女の身を守ると誓ったことをもちだして、
その約束を果たすことを迫った。エッツェル王も彼の助力を懇願し、ついにリウデゲール
はブルグント族と対決する。

リウデゲールは客殿に切り込み、ゲールノートと戦って相討ちになった。
こうして戦いは続けられ、ついに残った者は、ベルネのディートリヒとその臣下
ヒルデブラントと、ブルグント側のグンテル王と重臣ハーゲンのみとなった。

ディートリヒとヒルデブラントは客殿に乗り込み、グンテル王とハーゲンに降伏を勧めるが
拒絶され、ハーゲンはディートリヒに襲いかかる。
ディートリヒは戦いの末ハーゲンを取り押さえ、さらにグンテル王も縛り上げ
二人を王妃クリームヒルトの前に連れていく。

クリームヒルトはハーゲンに、ニーベルンゲンの宝はどこにやったかと尋ねるが
主君が生きているうちは明かせないと言う。そこで彼女は涙ながらに兄グンテル王の首を
はねるが、ハーゲンは宝のありかを知るのは神と自分だけでクリームヒルトのような
魔女には教えないと言う。これを聞いて彼女はジークフリートのものであった名剣バルムンク
をハーゲンから奪い彼の首を落とした。
この見るにたえぬ光景を見た老将ヒルデブラントは怒りに燃えクリームヒルトを
切り捨てた。

ニーベルンゲンの歌、山室静、筑摩書房、1987