フランクフルトのほそ道

ケルン日本文化会館館長だった荒木忠男氏の本です。
ドイツ留学者の中では、ひそかな名著

ホルバインの「ダルムシュタットのマドンナ」は詳しい解説だ。
この解説を知ってから原画を見ると興味が深まる。

ティシュバインの「ローマのカンパーニャのゲーテ」
(フランクフルトのシュテーデル美術館)
あまりにも有名な絵であるが、よく見ると
右足が左足の靴を履いている。左足が右足に比べて大きすぎる。

仏領アルザス地方のコルマーにあるウンターリンデン美術館の
「イーゼンハイム祭壇画」の作者グリューネヴァルトとは
のちの伝記作家の創作名で、本当の名前はナイトハルトというらしい。
コルマーの祭壇画を描いて7年後、同じテーマで無駄をはぶいて完成した絵が
カールスルーエのバーデン州立美術館にあるという。

美術館巡りも、知識があるのとないのとでは大いに違う。
著者は東大教養学科フランス科卒業。マールブルク大学留学。
フランクフルト総領事。英仏独語に堪能。他にイタリア語、ギリシア語、
スペイン語、ロシア語ができるとか。原書で名画の資料を読んだ。
(荒木忠男:フランクフルトのほそ道、サイマル出版会)