構造力学2の最終試験 その分析

   試験のできなかった学生の答案の間違い分析
   はじめての試み!

1998.2.9のいつもの講義の時間に1時間の最終試験をしました。
普段の成績がよい人は、この最終試験は免除(もちろん評価は優)ということを
しています。実はこの免除制度は10数年続いていて、時々優秀な卒業生から
自分は成績免除だったと言われることがある。

さて、それはそれとして毎年採点していて、計算力不足が気になります。
明らかに勉強不足で、手も足も出ないという答案もあるが、最初の式はあっている
のに計算を進めていくと、間違いが出てくる答案が意外に多い。
そこで、分析して、ホームページに記録しておこうと思う。
来年以降に参考になるでしょうから。

トラスの部材力の符号を間違えている。引っ張り力は+、圧縮力は−
ということが理解していない。最初はみんな+に仮定して計算するのだと何度も
説明しているのだが。自分で都合よく部材力の符号を変えて(最後まで自分の定義
を守ればいいのだけど)、結果の表示を間違えて表示している。
ちゃんと力の定義を理解していないから、途中でふらふらするのだろう。
確かに力の概念は難しいけど。

教科書の例題では対称構造に対称荷重が働くから、垂直反力は半分ずつだけど、
試験問題は非対称に荷重が作用するのだから、つり合い式をたてないといけないのに。
垂直反力はいつも荷重の半分ではありませんよ。
学生がよく間違えるものだから、教科書も改訂版にしたとき非対称荷重の計算例を
少し付け加えたのでした。

つり合い式は正しくたてたのに、かんじんの外力の大きさを間違えている。
これでは正しい反力は得られない。

トラスで垂直部材も水平部材も、それぞれ長さが5メートルなら、斜めの部材は
二等辺三角形の理論からして、5√2になるはずなのに、
ウッカリ5√3としている答案。注意力が欠けている。もちろん答はあわなくなる。

最小仕事の原理の計算なので、2次放物線を計算するのに、出発の式が違っている。
M=-qx2/2+X1x とすべきなのに
M=-qx/2+X1x としている答案
M=-qx2+X1x としている答案
M=-2qx2+X1x としている答案
など、不注意というか理解不足であろう。
M=-qx2/21x としているのは最小値を与えるX1が負数
になってしまい、自然現象としておかしくなる。

最小仕事の原理の計算で、(1/2)∫(M2/EI)dx の積分計算ができない。
そもそも積分区間は問題によると0から2L(Lではない)なのに、
教科書の例題の通りにLまでしか積分していない答案がある。
積分の外に1/2が付いているのに、いつのまにか分母の2がなくなっている。
答は真の値の2倍になってしまっている答案が数枚あった。

2次方程式はX1についての2次式になるはずなのに、
計算途中でX12が次の式ではX1になってしまっている答案。自分で写し間違いをしている。
これでは答が間違うのは当然だ。

最小仕事の原理の計算なので、2次放物線を描くと必ず下に凸になるはずなのに、
独創的にも上に凸のグラフを描いた答案があった。これが本物なら学会発表もの。
それでは最大仕事の原理になってしまう。

途中経過の式も説明もなく、突然天から降ってきたかのごとく
答だけ書いている答案。(普段の小テストの成績が悪いと、この試験答案を疑ってしまう)
計算式が途中ぬけて誘導が続けられているのに、答だけあっているというのも疑わしい。
カンニングしていないと思うが、インスピレーションで正解が頭に浮かんだのか?

単位をつけ忘れていたり、とんでもない単位をつけている答案も少なくない。
分数の答も数学としてなら間違いではないが、設計に使うには小数で出さないといけない。

次のようにおかしい理解をしている学生がいる。
支点反力の計算で、つり合いをとる点(支点)からの距離を反対にとっている。
(つまり、反対の支点からの距離をとっている)