構造力学2
建築と土木 感想文 2000.9

建築と土木 似ているが違う。 この機会に建築学会誌に出ている記事をみんなで読んで勉強しましょう。  その感想文のいくつかを紹介します。 No.1 建築と土木との違いについて  建築業と土木業の差異は、簡単に述べれば[建築は民、土木は公]であるということだ。 これは、依頼主の差異について示したもので、 建築は発注者が主に民間であり、土木は発注者が国であることであるのが特徴である。 土木は公共事業が主であるが、不況期には建設投資の比重が高くなる。 これは景気刺激策として公共事業への投資を行うためである。 これは、元来は生産誘発効果の波及効果が大きいためであるからである。  さらに差異を挙げると[生産システム]である。各々の生産システムの名称を [建築生産システム]と[土木生産システム]とすると、@建設市場(最初に提示したもの) Aプロジェクトの調達方式、Bプロジェクトの実施方法が挙げられる。 ちなみにプロジェクトの調達方式は土木では一式請負方式、建築は設計施工一貫方式、 あるいは設計と施工の分離方式が一般的である。 No.2   土木と建築の違いについて、まず建設市場から取り上げてみる。  まず土木であるが、不況時には産業全体をを活性化させるため公共事業への投資 が大きくなる。公共事業の中では土木の比重が大きいため、結果的に不況期でも土木 は安定している。   建築分野は逆に安定していないので、市場競争は土木にそれに比べて以上に厳し いことが推察される。競争が厳しいため、建築ではあらゆる面での差別化が図られ る。また、元受、下請け関係に需給変動の調整弁的役割を科すため、重層構造は土木 より深くなる。土木では業種によって直用が可能である。また、建築のなかでは競争 市場の利益を獲得するため、発注者、生産者双方で多彩なプロジェクトの調達方法を 模索するようになる。   次に、プロジェクトの調達方式などについて。  請負方式は、土木は一式請負方式、建築は設計施行一貫方式、あるいは設計と施 行の分離方式である。  建築分野ではVE方式、CM方式、PM方式などが採用されるようになってき た。理由としては、 @CM方式採用の動機として、明示性の確保、段階施工による 工期短縮、多職種間の調整、独立系コンサルの臨機応変な雇用などがあるが、これら は建築において、より効果が現れる。A土木の場合、発注者、建設コンサルタントと の共同によるハードな技術の開発、試作などを伴うことがあり、これらは技術提案型 入札方式や、デザインビルド方式がよりなじむ。  という2点があげられる。   そして、プロジェクトの実施に移る。  土木では図面がはっきりしており、しかもそれは発注者側提示の図面である。そ の中で工事の数量が明確にしてあり、実施された工事について支払いがいくらと算定 される。仮設については発注者側の施工計画に基づいて指示どうりに進める。経済的、 効率的な観点よりも安全性を重視することが求められる。そして発注者側が描いた図 面通りにやることが、施工側の使命である。また、土木の行程は工種が少ないために 積み上げ作業となり、工事の変更による工期の延長も認められやすい。サブコンの選 定については、一工種の守備範囲が広く個人的ネットワークによる選定よりも競争的 あるいはサブコン育成など戦略的な面から選定するほうが元請にとっては有利に働く。 また、元請の現場係員の減少と、一方でサブコンの施工能力、計画管理能力が向上しつ つあるので、サブコンへの材工共発注、計画管理業務の委譲が進んでいる。また、最 近の大型鉄骨工事では鉄骨サブコン「実施計画管理業務」「とび工」「鉄骨工・鍛治 工」「特殊資機材」のいままでは元請が担当していた領域をカバーしている。  建築では建築士でなければ原則として設計できない。そして、施工図は施行者側が 担当する。また仮設はコスト削減のために槍玉にあがる存在であり利益の源泉。安全 を見すぎると能力がないとみなされる。設計図、施工図の分業体制をとっており、また 行程計画では、まず全体工期が決まり、そのなかで、各種の工事が計画される。工期 的にきつい場合は、作業が初期の工期に盛り込まれる。建築工事に工種が多いこと がラップ作業になる原因となっている。サブコンの選定では建築では、技能に依存する 部分が相当程度あるため、うまく作業を進める人を使命する。前述した土木の鉄骨サ ブコンで多くなって来ている「資機材、とび込み」の発注形態は建築では特殊の建方 に採用され始めた。 No.3 建築と土木の違いというのは、先日授業でもあったように簡単に言うと 「人が住むところ」「人が住まないところ」とわけて考えることができると思います。 しかし、歴史上建築と土木のしてきたこと、創ってきたものにはその違いをすぐには 指摘できない時代がありました。それは様式主義という共通の作法を考えれば当然 とも言えことでしょう。では、建築と土木はどこでそれぞれがそれぞれの役割を感じ 別のものになっていったのか。おそらくそれは、鉄道が運河にとって代わってきた頃、 急速な建設量の増大と、それまできはない大きな建造物をつくるための新しい技術が 開発されてきたことによると思います。 また、建築が土木とは違うものとして広まった背景にはその地域の影響力というのも 大きな要因になります。特に19世紀から20世紀にかけてはフランス語圏が主な役割を 果たしていたことから、芸術の文化の強い地域がそうさせたといってもいいといえる でしょう。 No.4 内藤廣さんの文章を読んで  自分はもともと建築のデザインに興味があり、建築学科を志望していたので 興味をもってこの文章を選びました。  私は建築について、設計して建てるということしか考えていませんでしたが、 地形、気候、さらに植生まで考えなければならないということや、土木の範囲である 景観も考慮に入れなければならないということがわかりました。  また、内藤さんは、日本のいたるところで無秩序な風景を目にし、絶望的な気持ちに なることがあるそうです。私は特にそのような経験はないのですが、建築家たちが 建築物の集合体である都市のことを考えず、自分の作品のデザインのことだけしか 考えていないからだそうです。  私は大学に入って建築のことを考えることがほとんどなくなりましたが、この前 本屋で建築関係の雑誌を読んで、また建築に対する興味がわいてきました。 もっと土木と建築が共に活動する機会が増えればと思いました。 No.5 土木と建築の違いについて  私はこの建設環境工学科に建築家になりたくてきました。入って土木だと知り 驚きました。この学科にいるほとんどの人が私と一緒です。入ってから土木と建築の 違いについて、土木は公務員、建築は民間ということだけ知り、今までそれしか 違いをわからずにきました。今回このレポートを読んで、歴史的なこともさまざま 学びました。まず感じたことは岩手大学も東京大学の工学部のように左右対称の 右半分は建築学科に左半分は土木工学科にすればよかったと思います。でも、 私的には両学科の教官・学生が一緒に議論談笑する場も存在した方が楽しいと思いました。  私は土木と建築はほとんど変わりはないと感じてきました。確かに官公庁の土木工事 の受注から発展した企業も建築にはありますが、考えてもみなかったのが建築には 棟梁から発展した企業もあるということです。その原因として土木事業の財源が 政府による公共投資が中心であり、中央官庁と旧帝国大学を頂点として、公民を 含めた一体的な指導監督関係、ヒエラルキーが安定的に形成され維持されてきた ことにある。これに対して、建築は民需が一定程度の割合を常に占めており、官需は 日本全体の建築界で圧倒的支配的な役割を果たしえないことが根本的な原因となり、 官庁営繕自体が日本の建築界に与える影響は大きくなかったのです。結局は土木は国、 建築は民間というイメージが大きいです。  また、21世紀に必要とされている社会資本整備は豊かな都市空間の形成であり、 もう一つは地域住民から見て良いことをしてくれたと評価される生活環境、住宅、 福祉、NPDと連動した地域経営的な観点をふまえた社会資本整備である。私が将来 このような仕事にたずさわっていくにあたって、やはり地域住民から見て良いことを してくれたと評価される生活環境を作りあげていきたいと思います。 No.6  建築と土木の違い  建築と土木の大きな違いは、建築は人の住むものを作るのに対して、土木は人の 住まない構造物(社会基盤)を作っている点である。そのために、個人の発注が 多くなる建築は好況期に好調になり、不況期には政府が公共事業への投資を多く 行うため土木への投資の割合が高くなる。一般的に土木の方が建築よりも圧倒的に 投資金額が大きいため、建築市場は競争が激しくなっている。  建築と土木とではプロジェクトの調達方式も実施方法も異なってくる。土木では 計画から施工までをすべて請け負うことが多いが、建築では設計、施工が分かれて いる場合が多くなり、施工の中でも建築、設備工事と分離することもある。土木に おいて設計と施工を分ける方式で行うのはあまり効率がよくないため、設計施工を 一貫して行う方式がこのあともかなりのシェアを占めることになるだろう。  プロジェクトの実施方法においても、土木工事では設計、施工図は発注者の 責任で完成度の高いものを作らなければならない。そしてその上で工事の数量が 明確になり支払いがいくらになるかと算定される。建築では設計はもちろん建築士が 行うが、施工図を作るのは施工する人である。実際に施工していく中でも、土木 では予算さえつけぱ安全を優先した工事を行うために仮設を行うが、建築では コストダウンのためできるだけ部材量を落としたりする。安全をみすぎると 建築では能力のない人間と見られるのである。  そのほかにも違いはたくさんあるが、総じて自分が思ったのは、建築は市場競争 が激しくコストダウンや企業努力などによって限られた予算のなかで計画を行って いて、土木は比較的安定した市場の中で少しあぐらをかいて企業努力が建築に対して 足りないのではないかということである。現在、政府の構造改革によって公共事業が 減ろうとしているが、このことによって土木もまた競争が激しくなってよりよく なっていくことと思われる。 No.7  建設業ははるか昔すなわちレオナルド・ダ・ヴィンチなどの時代から常に興味関心 のある学問だったというのは、これを読む以前から知っていたことだが、やはり これほど重要視されている学問だったということだ。我々が生活していくためには、 建築・土木両方とも必要不可欠なものである。  現代では、 建築と土木とでは明らかに相違点を見受ける所ができる。そのはじめ として、やはり需要の違いだったと思う。この資料によると鉄道への変換期に確立され たらしい。そして、建築はやはり芸術性を極めた結果だと思う。  近代の土木は材料と設計解析ならびに施工技術の発達が大きな影響を受けている。 建築との大きな違いとしては、新たな造形意匠への取り組みがなされたか否かである。  自分のイメージとしては、土木は重厚な感じがするし、建築は繊細な感じがする。 それは、こなしている仕事の違いであると思うし、社会の位置関係の違いであるとも 思われる。中世ヨーロッパでもこなす仕事の違いにより分別されたと思うし、 二つの分野では期待されている所も違っていたはずだ。やはり現代では芸術と実用性 が大きな違いだと自分は思う。 last No.  「土木」の強度と「建築」の流動を読んで  「土木」と「建築」の相違については様様な点で伺うことができる。先日の宮本教授 の講義においても「人が居住するか否か」というのがひとつの基準として示された。  今回入手したプリントではこの「土木」と「建築」の違いについて、特にコンクリート に主眼を置いて書かれていた。本文ではいきなり「同じコンクリート材料を用いて これらの性能に土木と建築で違いがあるかというと、(中略)根本的な差はないと いえる。」というある意味ショッキングな書き出しではあったが、以下、その内容を まとめてみたい。  本文で筆者の松岡氏はコンクリートの三大性能が強度、耐久性、流動性(施工性) であるということに触れ、土木、建築の両分野においてその性能の向上にむけて努力が 重ねられてきたこと、しかしながらコンクリート強度の管理が土木と建築において相違 があること等が述べられていた。  ここであがった「土木」と「建築」のコンクリート強度の管理における相違とは、 土木では標準養生供試体で行うのに対し、建築では構造体コンクリートで行うという点 である。これらの詳細については今ひとつ理解できなかったものの、このようになった 背景が、土木構造物が一般に供用までの時間が長い故、それまでに所定の強度に達すれば 良いという考えにあること、逆に建築では時間が短いため、部材厚さが小さく外気温の 影響を受けやすいこと、設計荷重が比較的早期に作用することがそれぞれの管理法へ 至ったということが分かった。  また、土木においては「硬い」コンクリートを使用し、建築では「柔らかい」 コンクリートを使用しているということも述べられていた。  今回この資料を読んで思ったことは、今まで自分は「土木」と「建築」はその用途、 意義についてしか両者の相違を認識していなかったことである。この両者の世界に 欠かすことのできない「コンクリート」という一材料を通して新たな両者の相違点を 見出したことは最大の収穫であったと感じた。 (この文章は講義の終わった後に電子メールで送られてきた)