建設環境工学通論 平成16年度 応用化学科&材料物性工学科3年生

最終回のアンケートから

[本日のビデオの感想。]
青函トンネルの建設にはこんなにも苦難があったのかということを知った。
北海道と青森の間の海があんなにも荒れるとは思ってもいなかった。
過酷な状況での作業を二十年近く続けた人たちは本当にプロだと思った。
日本のトンネル技術は凄いと思った。
偉業の陰には、尊い犠牲者がいることを思うと感謝したい。
青函トンネルをつくるまでのものすごいドラマに感動した。
仲間の死をまのあたりにしながら工事を続ける人たちはすばらしいと思った。
土木の内容にとどまらず、人生の勉強にもなった。
素晴らしい大工事だったとは思うが、もっとリアルに状況を知りたかった。
あれではあまりにも美しく綺麗に描かれていて嫌だった。
働いている人たちみんなが本気で仕事に取り組んでいて、トンネルにかける情熱
みたいなものがすごいと思った。
小さい頃青函トンネルの作業坑を見学した。シーンとしていて少し肌寒かった
ような気がした。あの道を通って多くの作業員がこのトンネルを作ったと考えて、
感動したが、恐ろしいと思った。すごい技術だ。

[この講義全体について]
今までこういう形の講義がなかったのでおもしろかった。ビデオの内容を
abstractで書くのは、文章をまとめる力や聞く能力がつくのでいいと思う。
(こうい人は将来のびる)

メールでのやり取りは。今まで提出したままになっていたレポートの内容の
評価を知ることができるので良いと思う。
(インターネットの双方向の情報交換は学生にもこちらにも効果的)

見たビデオをまとめるべきか、それともビデオのほかに自分で調べるべきなのか
イマイチよくわかりませんでした。やはりビデオで方程式を一瞬見てメモしたり
するのは難しいので、そういうことが多いビデオなら、プロジェクトXのような
話の方がと良かったと思います。インターネットで調べて、色々なテーマの
HPがたくさんあることを知ったことは良かったと思います。
(意欲あるなら、こうしてインターネットで補足するのがよい)

ビデオの後のヒントはいらない。ビデオを見ればわかること。
早く終わってほしい。
(おやおや、これは親切でやっていること。これが参考になって良かったと
書いている者もいる。この回答者のように早く帰りたい人もいるということ。
学生さまざま。これは少数意見でしょう)

こんなに毎時間忙しい講義はなかなか無いと思う。
(こちらも忙しいのです。人数が多いと騒がしくなったり講義の効果があがり
にくいから、締め付けが必要)

インターネットを使って自分の意見を話すのはとても楽しかった。テストがないのもうれしい。
他の講義ではやらないことをやって、いい経験ができました。

電子メールを使うのは、これからの就職活動の備えになるので、とてもいいと思います。

講義で得たものは毎回の課題をやりとげたという達成感
(達成感は自信をつけるために必要、達成感を与える講義をしたい)

インターネットの利点は大勢の人に情報を送ることなので、講義では教えられ
なかったことや、学生からの質問などもホームぺージに載せたらいいと思う。
(この講義のホームページを見てもらって作る方としても嬉しい。
他の科目のページのように、学生の質問や回答、模範回答なども載せるようにしたい)

プロジェクトXの青函トンネルのビデオは良かったという回答が多かった。
また建設工学の実態を理論ではなく知ることができて良かったようである。

真面目に出席していても優にならなかったり、反対に
講義中に寝ていても最終課題で優をもらう者がいたりして、不合理を
訴える者もいた。

[私の感想]
卒業してから独り立ちできるよう、自立できるよう
自分の頭で考えることをさせてやりたかった。それが私のねらいである。
暗記だけでは考える力はつかない。自分で調べる練習、自分の考えをまとめる
練習をしたつもりである。
来年の課題として、「映画やテレビや漫画は受身のメディアと言われる。
読書と漫画の文化的違いを論ぜよ」もいいかもしれない。

工学部の専門科目は実学、実学は正統的な学問で、いわば公的な学問といえる。
これに対して、虚学とはすぐ役に立たない学問なので、私的な学問といえる。
実学はエンピリカル・ラーニング、虚学はエンプティ・ラーニング
他の適訳はないだろうか。
劉備に軍師としてつかわれた諸葛孔明、まさしく実学は虚学に使われ真価を発揮。
私の体験からもいえるが、大学の情報処理教育はどんどん変わる。
かつてプログラムは紙テープというメディアを使った。そのうち、カードとなり、
カセットテープになり、FDとなった。今ではMOやDVDだが、これも
いつまで続くか。これらのメディア教育は数年後には役に立たなくなる。
実学をするよりも、将来も使える基本理論のような虚学を教えるべきだ。
工学概論や技術史などは、自学科には実学的に教えられるが、
他学科には虚学的にならざるをえない。
学問とは実学虚学と分けるべきものではなく、虚実相補性がある。
「中山茂:大学生になるきみへ、岩波ジュニア新書」は大変参考になった。

最終課題のテーマは、一昨年度はこの建設工学と自分の学科の内容比較をさせ
て、自分の学科の特性を自分で考えさせたが、それほど建設環境工学科に理解して
いた回答は少なかったため、昨年度は自分の学科の科学史(化学史、物理学史、
材料学史)をテーマに選んだのであったが同じような回答が続くので、
今年度は、半月ごとにテーマを変えた。これはよかった。
ユニークな回答がより多く集まったと思う。
今年は、12月中は戦争に使われる建設環境工学、1月の前半は戦争に使われる
応用化学か材料物性工学、1月後半は建設環境工学の未来
そして期間限定しないのは、橋の文化史の感想文であった。
それにしても、年度末の忙しい時期に、1月後半にメールが集中するのは
大変である。普段から優秀レポートを書く学生をピックアップして
それらに先に優をつけることは効果的だった。
来年はより、年度末の忙しい時期に少ない時間で評価できるシステムを考えたい。
最終受付のエントリー期限は、1月末ではなく1月24日くらいにしよう。
したがって、12月最初から受け付けるようにすべきであろう。

一昨年や昨年は、他人の真似をしたり教えてもらって似たような回答を
するものが続出したが、今年はそういう回答は受けつけないようにした。
テーマを他人と同じものは受け付けないようにしたら、差がついてきた。
このように能力の差が出るようなので、できばえに自信のある者は勉強になったと
満足し、そうでないものは挫折感をもつようだ。
もちろん内容に不足のある者は、こうすると良くなるという指導を与えるが
こちらの注文が重いと感ずる場合放棄して成績が可でもよいとする者がいる。

簡単にホームページで探せるものは楽に入手できるが、なかなかホームページに
見つからないものは、あきらめる者もいる。参考書を読むという真面目な学生も
いるが、成績が可でもよいからそこでやめてしまう学生もいる。

学生の真の力を見ることができるようになったと思われるが、それなりに期間を長く取って
きめ細かく回答のチェックをする必要がある。こちらも真面目にやる必要がある。

最終試験一回、あるいは数回の試験で評価するよりは、このように集中的に
メールの送受信を繰り返し、テーマについて徹底的に議論する方式は
学生にとっても教員にとっても手応えのあるものになる。
実際に学生が調べた知識は、今後の教育や課題にも使えるものが少なくない。

いわゆる試験向きの問題や課題というものがある。予想される正解は一つとか限られて
いる問題で、誰が採点しても同じ判定になる問題である。それに対して、
この講義の課題はどちらかというと正解のない課題である。世の中のことを考えるなら
もともと正解がない問題にぶつかる方が多いのである。そういう正解のない問題を
与えるのは、学生の将来のことを考えて、あえて他の科目とは違う講義法や評価法
をとるのである。したがって、この講義では、個々のテーマに関して、学生がどう向き
合って自分の頭で考えたかを、こちらに示すものである。そのときのお互いのメールの
やり取りでもって、真剣に考えたかどうかを判定されるものである。
その場合、学生として望ましい学生の場合は、こちらの指示に従い、より良くなる
回答を送ってくるので成果は良くなる。それに反して、学生が主観的に判断して
もう回答することをやめたり、自分の考えを主張して、こちらの助言に耳を貸さない
者もいる。極端な場合、インターネットのフレーム状態になりそうなケースもある。
正解がない問題ゆえ、学生の主観を必要以上に主張するケースである。
そのような場合、どうあつかうべきか、これは今後の問題である。
おそらく、講義の初回当たりで、この最終課題の取り組みの姿勢などの注意をして
おいて、それに従わない者は、最初から受講すべきでないことを知らせた方がよい
のであろう。