日本シルクロード倶楽部
2001新疆の旅

8月30日 さあ、本日は小野議員の新疆大学での講演会の日である。当倶楽部の文化交流・メーン の日だ。題して「21世紀・日本の先端科学技術と文明との調和」である。議員は参院 選挙前に話した誘い(人間の森文明論をユーラシア大陸の真中・ウルムチの大学ぶち 上げてくださいよ)に乗ってくれた。 新疆大学はウイグル族が半数を占め、他数十民族が学ぶ学校である。少数民族の アイデンティは主にイスラムだ。人間の森文明論は共感を得ることが出きるであろうか。 大学のあり方は日本と違う。大学は一つの社会を形成しており、ほとんどの学生は寮に 住み、大学の管理者及び先生たちも学内に住居を持っている。国家の管理のもと、 大学に委員会があり運営されているのだ。 迎賓室に案内されセレモニーの始まった。まず中共新疆大学委員会書記王桐氏の挨拶、 その後、小野議員の今回訪問の目的挨拶があり、後、学長アニワル氏の学校紹介が あり、それぞれのメンバーの紹介等を御互いにしあった。日本の大学は学長がトップで あり、学校の経営の責任者であるが、中国の場合大学制度は大きく違うのである。 新疆大学は今春、新疆工学院と合併し学生数3万20OO名の規模の学校になった。 この度の講演は96年東京理科大でドクターを取得、ポストドクターとして数年日本に 滞在し、99年新疆大学に戻ったゲー二一教授が窓口になった。小生の勝手な思いである が議員の講演に花を添え、文化の交流を上乗せしたとの考えがあり、なにが出来ないか と思案している時、奈良市在住のピアニスト鷲尾惟子さんが参加してくれることに なった。開演11時密かに計画したことは旨くいくだろうか?。議員は自身の作詩作曲の うたを持っている。ピアノの演奏が始まりマイクをにぎった。緊張している様子、 声の出が悪い。失敗か、前日の睡眠不足による疲労からか、飲み過ぎのためか? ぶっつけ本番の音合わせも無く、少々責任を感じた次第だ。 しかし、先端科学技術の話になるとともに調子が上がり始め、文部科学省から借りて きたという松本零士の未来イラスト漫画は判りやすく、そして人間が手にした科学技術 と社会の関係を語り、提唱する人間の森文明論と絡めて、心の領域まで路み込んだ講演 は好評を博した。最後、ユーラシア大陸の真中、この地域には40数民族が住んでいる が、それぞれのアイデンティを持つ民族が自覚を持ちながら調和を図る、この地こそ 21世紀人間の森文明を考える大切の場所ではないかと締めくくった。 質問が数問あった。少し場違いな石原知事に関する質問もあったが、知事の経歴を 説明して終わった。 講演後行われた懇親会でも「人間の森文明論」に感動した印象が語られたが、学長招待 の昼食会で、議員の著書「日本はアメリカに必ず勝てる」を新疆大学で翻訳しましょう と話が出たことでも、講演が好評であったことがわかるであろう。 昼食会は新疆スタイルの接待である。アニワル学長、ゲーニー教授、校長室弁公室主任 バハトル氏(日本留学経験者・数学系教授)、焦外事処副処長、カザフスタンから来た 地震学者(学長の友人)議員と我々一行、賑やかな会になった。いろいろな要望やら 希望が語られていたが、やはり議員の一番嬉しかったことは翻訳の話が出たことで あろう。ウイグル語で、カザフ語で、キルギス語でもと話が飛んだが、学長が条件を つけた。それは出版記念パ一テーに必ず出席すること。ウイグル人はなかなか話の 運びがうまい。その後ゲーニー教授の立ち上げた研究室を訪問、学生たちの研究ぶりと ともに、教授の意気込みを感じ、また苦労も感じた次第だ。 小野議員講演後の鷲尾さんのピアノ演奏はどうなったであろうか?小生たちは聞いて いない。なぜなら大学の資料室から呼ばれて、そちらを見学していたから。彼女は日本 の演奏家ではじめてであろうとかと思うが、ウイグル音楽のリズムを取り入れピアノ 演奏をしている。やはり予想通り大好評だったそうである。ウイグル人にしてみれば、 自分たちの音楽がピアノ演奏の中に見事に生かされていることに新鮮な感動を覚えたの であろう。鷲尾さんはサインをせがまれたと語った。文化交流の実が上がったことが 嬉しい。 夕食は日本留学経験者が招待してくれた。多くの倶楽部と交流を持った人達の顔が 見えるが時間が無く、一人ひとりとゆっくり話が出来ないのが残念である。新疆日報 の記者が同席して、食事をしながら取材を受けているからだ。フシタールの名手・ グリナールさん、新疆芸術学院踊り系教授デイララさんとは目を合わせただけで 終わってしまった。 楽しい時間を過ごしながら新疆に来て四日間、何時も心に引っかかっていることがある。 理由はシルクロード倶楽部のアイドルでマスコットガールのアデナちゃんに未だ会う ことが出来ないのだ。ウイグル族のかわいい賢い少女である。両親の事情があって、 昨年一月新疆に戻った。この子は母親の影響か踊りが旨く、倶楽部の活動に良く協力 してくれた。初めて倶楽部に来たときの踊りを見て、皆々びっくりしたのである。 物まねでなく、自分で創作して踊る姿は素晴らしく、以後ウイグルの文化紹介に力を 発揮してくれた。 突然、新疆に帰ったアデナちゃん、あの子はどうしたと、心の中に空洞が出来て1年半 余り、この度の訪問で最大の楽しみは、彼女に逢うことなのだ。 10時パーテーが 終わる頃になってもまだ現れない。ようやく来てくれた。背が1Oセンチ位高くなって いる。ホリデインホテルに場所を移して、楽しい時間を持つことになった。人生の 醍醐昧とはこんな事にあるのかもしれない。なんて幸せなことであることか。 痩せて細く家内より大きくなってしまったが、伸びざかりなのであろう。夏休みで父の 実家、アトシーにいっていたという。母の妹(日本留学中)が連れてきてくれた。 27日にウルムチに戻ってきたという。踊りはと聞いたら、廻りの人が驚くほど上達 しているというそうだ。アデナちゃんは少し悲しそうな顔をして、日本語を忘れました と云いながらも、いろいろと話すことが出来た。 この1年で中国語の授業に完全について行ける様になったそうだ。英語も勉強している といった。小学五年に在学しながら、生活ではウイグル語をしゃべり、学校では中国語 で勉強し、塾で英語を勉強して、尚かつ日本語を忘れないように努力しているという。 聞きながら熱いものがこみ上げてくる。 中国の学校教育は詰め込み主義で、日本のゆとり教育など論外の立場をとっており、 鉄は熱いうちに打てとの方針である。宿題も一杯でる。留学生たちが子供を連れて滞日 し、学位などを取って国に帰るとき、子供の教育に一番頭を悩ます。日本の教育を受け た子は中国の厳しい教育について行けないそうだ。 言葉は道具、ウイグル人は数カ国語を使う人が多く、21世紀を生き抜くにあたって 有利に働くであろう。アデナちゃんには、是非、日本の大学で学んでもらいたいと 思っている。協力してくれる人は手を上げてほしい。 長い1日が終わった。議員は明日早々に北京に戻る予定だ。倶楽部の交流は続く。


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