日本シルクロード倶楽部
2001新疆の旅

8月28日 小野議員は、新疆ウイグル自治区は初訪である。出発前に新疆ウイグル自治区のことを 説明に伺った折に、議員は予備の知識を入れるより現地を先ず見ようと話された。 自然風土に接し、そこで暮らす人の話を率直に聞くことが一番よいことである。 午前中エイテンガル寺院参観(金曜日の礼拝日や祭日以外は参観できる)、案内の ムラット君の説明を受けるが、彼はもちろんムスリムだ。メッカに向かって神を戴き ながら、心をどのように働かせて導きを得るのであろうか。祈りの方法や内容などに ついて話が及んだ。議員の感想は如何に。 ムラット君の日本語がしっかりしていたので、何処で学んだか聞いたら長春にある 師範大学とのこと、先生は矢田部先生と答えた。人の往来は即、文化の交流である。 言葉が初めにあることは当然であり、当倶楽部が出版(現地出版)した日本語教科書や 語彙集はよく売れている。日本にいて聞こえてくるイスラムの話題はいつもホットで ある。謙虚にイスラム社会を学ぶことは必要で大切なことだ。 寺院に隣接する職人街を散策する。2年前に歩いた時と少し雰囲気が違うなと思いつつ、 やはり当時に感じたことが現実となっているのだ。 99年ウルムチからカシュガル まで、汽車が開通することが話題になっていたが、その結果は内地から生産された生活 物資が大量に入り、伝統的な手作りの世界、職人街は大きな影響を受けている。道路の 真中に靴の山が築かれ売られている。店の雰囲気がよそよそしくなっていて、 マスプロダクションの悪弊の波が押し寄せているのだ。2年前には店の中で職人達が 額に汗して鍋など打ち出していたが、何処に行ったのであろう。同じようなものが 工場で作られ売られているのだ。 世の中の変化は、何故だんだん面白くなくなってくるのであろうか。親父さんに教え られながら薬缶を作っていた少年、人の手で心を砕きながら物を作る現場が消えつつ ある。小生は大きな手作りの鍋が欲しかったのである。職人街の熱気は早晩消え去るで あろう。仕方がない。ムラット君にお願いして手配をしてもらった。 心寂しいまま午後は香妃廟へ。小生は、墓場は好きではないが、しかし又見ることに なってしまった。墓廟の中から、感慨など持ちたくないと思っているからである。 人は神より魂を授けられている。心も然りであるが、心は自身で使うことを許されて いる。勝手に使うが故に魂を傷つけ罪を作るのであろう。肉体の滅びた人々、ここに 眠る人達はどのような心を持って生きたのであろうか。自分の心を覗いて、つくづくと 神の前で懺悔の必要を感じながら香妃廟を後にした。 いや高し、ミチェット仰ぐ空なれや、青く澄みたる、天のひろさを。 ここカシュガルにくると何故か身が軽くなるような気がする。気候のせいか、元気が 出るのだ。夕食は楡の大木が数本生えている下に設えたレストラン、早くもカシュガル 歌舞団の音楽が賑やかである。雨のほとんど降らない地域ならでの青空レストランは 人が一杯だ。客は内地の漢民族や、シンガポールの人らしいが日本人はいなそうだ。 周りは植物園になっており、このようなコンセプトのレストランは日本には無いかなと 思う。楽しく飲んで、食べて踊って地上天国を昧わった。


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