「張生彩鸞灯伝」 (灯籠まつりの宵)
越州のハンサムな張瞬美(ちょうしゅんん)は科挙の試験に落ちて、
灯籠まつりの夜に杭州の町を歩いていたら美しい娘に会う。
二人は互いに惹かれるが言葉を交わすことはできない。
娘のことが忘れられない張瞬美はまた灯籠を見にでかけ、よくやく見つけた
娘は、帰り間際に彼に恋文を渡す。翌日は両親をはじめみんな灯籠まつりに
でかけと、侍女と二人しかいないから家に来るようにという手紙だった。
喜んだ張瞬美は翌朝はやく娘の家を訪ねた。しかし、娘の両親が戻って
くれば会えなくなるというので、二人は張の親戚のいる鎮江へ駆け落ちする
ことにした。夜になり、娘は男装して男と一緒に逃げたが、まつりの混雑で
二人ははぐれてしまった。女は一人では町を出られないはずと思った張は
一晩中娘を探すが見つからない。翌朝、川辺に女の靴が1つ見つかり、
町には女が川に飛び込んで自殺したとか、誘拐されたという噂がひろまった。
悲しんだ張瞬美は病気になり寝込んでしまう。
しかし、娘は混雑にまぎれて無事城外に逃げ出していたのであった。
わざと靴ひとつを置いていったのは、両親を断念させるためだった。
娘は張瞬美が先に一人で目的地に行ったものだと思って、鎮江になんとか
たどりついたが彼は来ていなかった。困り果てていたとき、たまたま尼僧に
めぐりあい尼寺に住むことになった。
さて、張瞬美のほうはしばらく休養してから故郷に帰り科挙の試験の勉強
に取り組んだ。科挙の試験を受けるため都に行く途中、強風のため鎮江で
足止めをくい、陸に上がって散歩していたとき、女のいる尼寺に入り
恋人と再会できる。彼はめでたく科挙の試験に合格し、女を連れ故郷に錦を飾る。
「鶯鶯伝」(おうおうでん) (会真記)
唐宋伝奇集にある。
中国では有名なラブロマンス。
ハンサムボーイで家柄の良い張生と美人で貧しい美女・鶯鶯(インイン)の中を
取り持つのが紅娘なる女性。いわば仲人役。彼女は既婚の女性である。
「西廂記」 せいしょうき
張君瑞(ちょうくんずい)は偶然美人の崔鶯鶯(さいおうおう)に会い
一目惚れしてしまう。匪賊が鶯鶯を略奪する騒ぎが起こり、鶯鶯の母親は
匪賊から守ったものに鶯鶯を嫁がせると約束する。
張君瑞は友人の将軍に頼み匪賊を撃退させる。その後二人は逢い引きをして
結婚の約束をする。しかし、鶯鶯の母親は約束を破り、娘を大臣の息子に
嫁がせようとする。張はやむなく長安の都にでかけ努力の末科挙の試験に
合格する。一方大臣の息子は鶯鶯に嘘をついて張君瑞はほかの大臣の娘と
結婚したという。しかし、まもなく張は帰り、誤解は解け二人は結婚できる。
「拝月亭」
13世紀はじめ、モンゴル軍が金に侵攻したとき、国防大臣の妻と娘は難を逃れて
南へ逃げた。娘は母とはぐれ、書生と道連れとなり、二人の間に恋が芽生え結婚する。
モンゴル軍が撃退され、戻ってきた父親は、相手の男が無一文なので娘の結婚を
許さない。発憤した青年は努力して科挙の試験に主席で合格する。
やがて、父親は高級役人が娘の前夫ともしらず、娘にむりやり結婚を勧めるが
当人同士はそんなことを知らないからそれぞれ拒絶する。ついに策略により
二人は会うことができ、事実を知って結ばれる
参考文献 張競:恋の中国文明史、ちくまライブラリー90